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不定期宇宙船 No.1

片桐 哲


 
 こんにちは、同人の片桐哲です。
 今回からコラムの連載を始めることになりました。
 コラムやエッセイと言われても、なにをどのように書けばいいのかよく分からないので、とりあえずSFと創作、その周辺のことなどを書き綴っていってみようと思います。もちろん、ほとんど個人的な思い出や出来事しか書けることはないけれど。


 星群に入会した1980年頃は、まだ原稿用紙に万年筆で文章を書いていた。まさか自分が生きている間に、こうしてパソコンのディスプレイに向かい、日常的になんの違和感もなくキーボードを叩く時代がやってくることなど想像もしていなかった。カンブリア期の生物進化の爆発のように、現代はエレクトロニクスの進化が爆発しているような印象がある。不思議な時代に生まれたと思うね。
 星群入会以前、一日に400字詰め原稿用紙で何枚くらい書くことが物理的に可能か試したことがある。太めの持ちやすい万年筆であったが、書いてみるとボクの筆圧が強いせいで15枚くらいで手の限界がきてしまい、まだ小説も書いていないのに、これでは流行作家にはなれないな、などと妄想したものだ。(爆)
 誰でも考えることだと思うが、欧米人がタイプライターを叩く映像を見て、ものすごく羨ましかったことを覚えている。
 ところがその後、数百万円もする日本語ワードプロセッサーが開発されたと思ったら、数年後にはパーソナルワープロが廉価で店頭に並ぶようになった。ボクも1985年頃に発売された『文豪ミニ7』をさっそく購入し、初めてキーボードに触れることができた。ワープロとしての性能はたいしたものではなく、編集容量は原稿用紙14枚分くらいだったが、早くキーボードに慣れておきたいという理由で手に入れたのだった。
 しかし、そのキーボードはJIS配列キーだったので、ご存じのとおり「かなキー」が四段に分散しており、日本語をブラインドタッチで入力するにはローマ字入力を使う必要があった。思うに、かな入力にアルファベットを使うのは不合理だし、どうしても違和感は拭えない。ボクは古い人間なのか……。
 そこで次の機種には親指シフトキーボードを備えた『OASYS30』を選択した。編集容量は原稿用紙90枚分くらいになった。親指シフトキーボードは「かなキー」が三段に配分されていて、ブラインドタッチでも直接「かなキー」を打って入力できる。二週間ほどかけて練習し、それ以来、指が忘れないように、日に一度はキーボードに触れるようにしている。
 ワープロがいつの間にか市場から姿を消し、いまではいやでもパソコンを使わざるを得ないわけだが、機械がパソコンに換わってもキーボードは親指シフトを使っている。もちろんワープロソフトは『OASYS』だし、日本語入力は富士通のIMEである。編集容量は最大36メガバイト……って、原稿用紙何枚分?
 親指シフトキーボードは日本語入力の速さではもちろん世界最速。当然、理屈の上では一日に何十枚でも原稿を書くことができるわけだが、ぼくの才能が追いつかない。宝の持ち腐れ。
 そんなわけで、コラムなど引き受けて、せっせとキーを叩こうという算段。老化防止か……。(苦笑)
 

(2007.5.10)

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