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不定期宇宙船 No.2

片桐 哲


 
 パソコンやワープロで文章を書いている星群同人の皆さんは、ディスプレイの編集画面は横書きでしょうか、それとも縦書きなのでしょうか。たまにテレビで、執筆中の作家のディスプレイを見る機会がありますが、やはり横書きばかりで、縦書きにお目にかかったことはありませんね。

 ボクが最初に入手したワープロ『文豪ミニ7』は10インチのCRTディスプレイで、モノクロ画面に白抜き文字で40字14行、横書き表示でした。ずっと縦書きで原稿を書いていたボクにとって、初めてパーソナル市場に出たワープロは、キーボードのJIS配列といい、横書き表示といい、たいへん使いづらいものでした。編集容量の少なさや、JIS第二水準漢字がないことや、印刷が感熱リボンでオートシートフィーダーがないなど、いまでは信じられない性能です。
 その頃、星群報に載った『ガンダム』に関する文章は『文豪ミニ7』で印字したものですが、横書きの白抜き文字で星群への投稿SFを書いていると、なんだか小説を書いている気がしません。理系の論文じゃないんだから、やはり縦書きでないとまったく気分がでない。これはわがままなのか、それともボクが古〜い人間なのか……。
 そこで次に購入するべきワープロは、縦書き編集ができ、振りがなが使え、禁則処理が可能で、かな入力が容易、という贅沢な条件を満たすものと決め、ワープロの仕様がそこまで進化するのをじっと待って、ようやく『OASYS30』を買ったわけです。
 ところが、ワープロがやっと完成形に近づいたというところで、文章入力端末機の世界の趨勢は、パソコンへとシフトを変えてしまいました。『OASYS30』が寿命を迎えるころ、電気屋の店頭にはワープロの影も形もありません。嫌でも後継機にはパソコンを選ばざるをえなくなりました。
 ワープロ専用機の代わりに買ったパソコンは、台湾のFICというマザーボード製造メーカーの日本法人が、自社ブランドで組み立てたAT規格のDOS/V機で、インストールされているのはOS(Windows95)だけでした。その代わり、最新最速のCPU(とは言っても、クロックは200MHz)を搭載し、17インチのCRTディスプレイがついて、二十四万八千円という廉価機です。当時、同じ性能の国産メーカー品は三十万円を超える価格でした。これに富士通のワープロソフト『OASYS95』と親指シフトキーボード、エプソンのインクジェットプリンターを買い足して使いました。
 ワープロソフトに『ワード』や『一太郎』を選ばなかったのは、使い慣れた『OASYS30』と互換性があるということと、親指シフトキーボードのドライバーが『OASYS95』のIME(日本語入力)に組みこまれていたからです。もちろん縦書き編集も専用機以上に快適にできるようになりましたし、フォントを24ドットにすることで、活字のような明朝体で表示されます。編集画面も原稿用紙と同じ20字20行に設定し、いかにも文章を書いています、というムードは満点(爆)。17インチの画面に400字表示だと、字がでかいので眼がとっても楽です。
 それ以来、『OASYS95』を使い続けて、もう十年以上になります。ソフトウェアのいいところは、いくら使っても壊れないということでしょう。しかしIMEは『OAK4』から『JAPANIST2003』に変わりました。ソフトは壊れないけれど、キーボードは壊れる。親指シフトキーボードを買い換えたとき、新機種に『OAK4』のドライバーが対応していませんでした。
 この文章も当然『OASYS95』で書いたものですが、そのまま送ったのでは大抵の相手がファイルを開けません。『宇宙塵』に送ったときは『一太郎』ファイルに変換し、『星群』に送るときも、『一太郎』使いのE氏のために『一太郎』ファイルに変換し、『星群ホームページ』のY氏に送るときは、テキストファイルかHTMLファイルに変換しなければならない。ああ、マイナーなワープロソフトを使う悲しさよ(泣)。
 この文章も、執筆中は『OASYS95』の縦書き画面で編集し、それをホームページビルダーで作ったHTMLファイルにコピーしたものです。
 

(2007.5.20)

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