戻る

不定期宇宙船 No.6

片桐 哲


 
『星群祭2007・合宿前』

 7月21日払暁、関西に向かう深夜バスの窓を雨が洗っていた。雨は勘弁してほしいなと思っていたら、日頃の行いが良いせいか、京都駅八条口前でバスを降りたときには歩道は乾き始めていた。
 駅のコンビニで握り飯など買い込み、去年は東寺で朝飯を食べたので、今年は東福寺に行って見ようかと歩きだした。しかし、東福寺は拝観時間まで門が閉じられていて入れない。
 仕方がないので線路を超え、まだ行ったことのない三十三間堂に向かう。こちらはもう入場券を売っていたので、拝観することにする。
 まったく予備知識なく本堂に入ったので、千体の観音像にはいきなり驚いた。テレビなどで堂内の映像はたまに見かけることがあるけれど、それがボクの頭の中では三十三間堂と結びついていなかった。これまでは三十三間堂といわれたら、通し矢しか連想できない。手前に居並ぶ国宝の仏像群も、おお君たちここにいたのか、という感じだった。
 朝飯は境内の隅のベンチで目立たないように食べる。当然、他に飲食してる人なんかいない。
 9時半頃、三十三間堂を後にする。のんびり歩いていけばマンガミュージアムの開館時間にちょうどいいだろうと考えたのだが、地図など持ってきていないので、頭の中で勝手に思い描く御池通りまでの鴨川沿いの遊歩道は、思いの外遠かった。1時間くらいかかったかな? 普段チャリンコを愛用しほとんど歩かないものだから、息も絶え絶えでミュージアムに到着する。意地を張らずにさっさと地下鉄に乗ればいいものを、バカだね。
 ミュージアムの玄関をくぐり、500円を自動販売機に入れて、受付で入場券にはんこを押してもらう。疲れたので、一階吹き抜けのホールでベンチに腰掛けボー然とする。強い冷房が気持ちいい。
 汗が引くのを待って、館内を一巡りする。さて、3時まで誰を読んで時間を過ごそうか。萩尾望都か竹宮恵子か……。結局、浦沢直樹を選択し、『プルートウ』から読み始める。じっとマンガを読んでいると冷房が強すぎる。ホールの外のテラスのベンチに移動する。テーブルもあるし、気温もちょうどいい。ここは食事もOKのようだ。
 校庭は人工芝が敷きつめられ、座ったり寝ころんだりして本を読んでいる人もいる。時々、紙芝居のおじさんが拍子木を叩いて子供を集めていく。玄関脇のテラスに屋台が出て、兄ちゃんが「生ビールにフランクフルトソーセージ」と呼ばわっている。一瞬心が動いたが、いまから呑んでもな……。
 『プルートウ』と分厚い『初期短編集』を読み終えると3時になった。ミュージアムを後にし、すなおに地下鉄に乗る。
 3時半に東本願寺裏のペンションに到着。すでに2名来ていた。いつものように一番風呂に入る。極楽、極楽……。
 

(2007.7.25)

inserted by FC2 system