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不定期宇宙船 No.8

片桐 哲



 (わ〜ん、8回目にして早くもネタ切れや。しょうがない、夏休みだし、読書感想文でも書くか……)

 お盆の前後はあまりの暑さに外出などできず、エアコンの効いた書斎に閉じこもって読書三昧。とはいっても、読んだのは村上龍の『半島を出よ』上下巻と、北条司の『エンジェル・ハート』1〜22巻まで。

 『半島を出よ』は合わせて900ページを超える大作で、文体は「」をほとんど使わず、改行も少ないので中身は詰まっているが、読みやすい文章なので長さを感じさせない。
 日本側の登場人物はデフォルメされていてマンガチックなのだが、北朝鮮のコマンド達は実に人間的で感情移入しやすいように書かれている。作者の興味はそっちにあったんだろうね。
 一昔前なら、近未来という設定だけでSFなんだけど、『半島を出よ』はSF?
 村上春樹はハードボイルドやSFの構造を借りて、古い器に新しい酒を注ぐように自分の小説を書いているわけだが、村上龍はどうなのだろうか。
 『5分後の世界』や『ヒュウガ・ウィルス』はSFにしか見えないし、他にも近未来物は書いている。
 しかし、芥川賞作家がSFを書いても、ジャンルは純文学なのである。書店でSFの棚には並ばない。
 小松左京が『首都消失』を書くとSFになり、村上龍が『半島を出よ』を書くと純文学になる。外からやってきた力によって、国土の一部が切り取られるという構図は同じだけどな。
 「SFの浸透と拡散」という言葉を聞かなくなって久しいが、ポスト構造主義といっしょで、あらゆるジャンルにおいてSF的手法を導入することなど当たり前の時代になったということなのだろう。
 SFは大雑把にいえば、読者が想像もできないアイデアを捻り出すか、読者が想像もできないほどに細部を書き込むかのどちらかなので、『半島を出よ』は作者の想像力によって北のコマンドが生き生きと描写され、おもしろい物語になった。

 『エンジェル・ハート』は深夜の枠でアニメ放映されたとき、ちらっと見ておもしろそうだったので、今回、弟から借りてきた。
 ハードボイルド劇画かと思いきや、ナミダじわ〜〜、人情噺かいな?
 かと思えば、スラップスティックなギャグシーンも、てんこもっこり。
 劇画とギャグデフォルメされたキャラを混在させるのは、みなもと太郎が始めたと思うけれど、当時はこんなのありかとショックを受けた。いまでは普通のことになってしまったが。
 主人公の香瑩は魅力的だけど、登場する他の女性キャラの顔は似かよっていて混乱する。まあ、男性漫画家はたいてい一種類の美人しか描けないといわれているので、北条司も例外ではないのだろう。本人は描き分けているつもりなのだろうが、読者から見るとよく似ている。
 『セーラームーン』じゃないけど、「美少女戦士もの」か、主人公の年齢からみると「闘う女子高生もの」系かな。
 ネットで調べたら、23巻が発売されていた。弟に催促しよ。


(2007.9.1)

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