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不定期宇宙船 No.13

片桐 哲



 記録媒体としての書籍の優位性は、デジタルがはびこる現在でも失われていません。なにしろ再生装置は人体なのだから、壊れたりモデルチェンジしたりする心配がない。
 それにひきかえ、記録再生を機械に頼るコンテンツは、再生装置が製造中止になった段階で、それ用の記録媒体はただのゴミになります。
 8ミリフィルムやベータのビデオテープはいまやゴミとなり、レーザーディスクやカセットテープもゴミ化しつつある。8インチディスクや5インチディスクはいまやゴミとなり、3.5インチフロッピィもゴミ化しつつある。
 記録媒体としての耐用年数も、中性紙化された書籍なら数百年と言われ、ぶっちきりでトップです。次に続くのがアナログレコードでしょうか。CDは理論上は100年持つといわれていますが、まだ登場してから30年も経ってはいないので、検証は行われていません。
  書き込みDVDはどれほどの耐久性があるのでしょうか。いまのところボクの見通しでは、10年も持てば上等かなという感触です。それも定評のあるメーカー の高額なディスクに限っての話であり、家電量販店の店頭には廉価なディスクが並んでいますが、ネット上ではいま、焼いたDVDディスクが1年も経たない内 に読めなくなったという泣き言が飛び交っております。
 ものを売る側は、マルチメディアなどと口当たりのいい言葉をならべてきますが、内容はいつまでたっても発展途上の未完成品にすぎませんね。

 パソコン用のハードディスクも、ついにその記録容量がテラバイトで表記されるようになりました。ボクが10年前に買ったパソコンのハードディスクは2ギガバイトでした。1テラバイトは1,000ギガバイトです。
  これがどれほど途方もない容量かというと、先日、星群祭のノベルズ用に送った応募作品(400字詰原稿用紙換算で48枚)の容量が一太郎ファイルにして 46Kバイトだったので、その割合で計算すると、1Mバイトにはおおよそ500枚の長編小説が2冊収まることになる。すると、1ギガバイトには2千冊、1テラバイ トでは2百万冊記録できることになります。へー、そうだったのか。
 ちまたでは、DVDディスクの不安定さに嫌気がさして、安くなった大容量ハードディスクにデータを入れておく人が増えています。ハードディスク間ではコピーのスピードが速いので、DVDディスクに焼くより楽だし、データの管理も簡単です。どこかに紛れ込んだディスクを探すのは大変だし。
 しかし、どれほど容量が増えても、ハードディスクが消耗品であることに変わりはありません。壊れるときはあっけなく壊れます。なんの前触れもなく壊れることも多い。その場合、容量が増えた分だけ、こうむる被害も大きくなります。
  星群も編集人が代わられて、今回の応募作もメールの添付ファイルのみでオーケーでした。同人の方々もほとんどはパソコンのワープロソフトで作品を書いてお られることと思いますが、ハードディスクは消耗品であると肝に銘じていただきたい。バックアップをおこたらないようにしましょう。
 ボクのパソコンのハードディスクは、OSを入れたシステム用と、データバックアップ用と、システムバックアップ用の3台を積んでいます。まんいちシステム用ハードディスクがクラッシュしても、システムバックアップ用ハードディスクにケーブルをつなぎ換えるだけで、すぐ復活します。5分とかかりません。

  デジタルでなければ夜も日も明けぬ世の中ですが、紙媒体の有用性は健在です。年金の記録問題を見てもわかるように、デジタルに間違いがないとしても、その 前に人間がミスを連発すれば、あのような結果になります。ところが領収書や書類が残っていれば、少なくとも自分が生きている間くらいはそれが失われること はありません。
 たとえ人生がうたかただとしても、生きてる間に自分の記録が泡と消えてもらっては困るのですよ。


(2008.2.1)

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