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不定期宇宙船 No.16

片桐 哲



『オーディオ三昧』

 読書に次ぐ娯楽は音楽を聴くこと。生のコンサートではなく、いわゆるオーディオと呼ばれる再生音楽専門である。どちらも家から一歩も出ずにできることで、ほとんど引きこもり(笑)。
 中学生のときに使い始めた卓上電蓄といわれる安物のレコードプレーヤーを卒業して、トリオのステレオセットを買ったのは、22歳のころ。それから三十余年、飽きずにオーディオ三昧は続いている。
 世の中にはハイエンドといわれる高級オーディオの世界が存在するけれど、ボクは好きな音楽が気持ちよく聴ければいいので、ステレオ機器はオーディオ入門クラスと呼ばれる程度のものを使っている。スピーカー二本、プリメインアンプ、CDプレーヤー、レコードプレーヤーという必要最小限のセットである。AV(アダルトビデオではない)もマルチチャンネルステレオも興味はない。昔ながらの2チャンネルステレオで充分なのだ。
 スピーカーは20センチウーハーの小型ブックシェルフタイプ。聴く音楽のメインは女性ボーカルなので、16センチシングルスピーカーでもいいのだが、いまどきそんなスピーカーは売っていないし、ジャズやロックも少しは聴くので、16センチでは低音に不満が残る。ということで、能率が高く、大音量でも小音量でもバランスの崩れない20センチ2ウェイを使うことにしている。
 プリメインアンプは8オームでの実効出力が160+160ワットあり、相応に電源がしっかりしているので、重量が33キロある。二階に運び上げるのに必死の思いをした。置いたら二度と動かす気がしない。
 小型スピーカーになぜこんな大出力アンプが必要かというと、やはりジャズやロックは大音量再生においてその真価を発揮するわけで、そのときの低音の力強さは強力な電源を積んだ大出力アンプに一日の長がある。また軽量コーンの小口径ウーハーで鳴る低音の歯切れの良さは、大口径ウーハーでは再生されえないもので、ジャズのウッドベースさえ軽快に聴こえるくらい音の立ち上がりが速い。
 CDプレーヤーは、SACDやDVDオーディオなどを再生できないCD専用プレーヤーを使っている。ディスクがゴミと化さないように、録音の規格はできるだけ絞って買うことにしているので、持っている音楽媒体はCDとアナログレコードの2種類のみ。CDを買うのも10年待った。10年経って、この規格が長持ちしそうだと見当がついてから集め始め、それでもいつの間にか200枚を超えてしまった。レコードと合わせると400枚以上ある。これだけ溜まるとあまり新譜は買わなくなるもので、最近はどうしても欲しいと思うものにしか手を出しません。
 ADプレーヤーは35年間使い続けているテクニクスのSL-120。今でも販売されているSL-1200のアームレスタイプである。当時からターンテーブルのメカニズムはダイレクトドライブよりベルトドライブのほうが音が良いといわれていた。しかしボクは、メンテナンスが楽で長持ちするに違いないダイレクトドライブを選択した。それにしても予想以上の長寿である。トーンアームはSMEの軽針圧ショートタイプで、シュアーのMM型カートリッジをつけている。
 ボクはオーディオマニアではないので、我が家にオーディオルームなどというものはない。ステレオセットは書斎の片隅にこじんまりとセッティングしてある。
 壁のコンセントはオーディオ用に専用回路を引き、ホスピタルグレードの3Pコンセントを取り付けてあるが、ワープロ用パソコンの電源プラグも平気で挿してある。雑音の巣であるデジタル機器をピュアオーディオの装置といっしょにつなぐようなことは、音にうるさいマニアなら絶対にしないところだろうが、ボクはそんな些細なことは気にしない。
 ステレオが書斎にある以上、当然のようにワープロを打ちながらBGMとして音楽を流している。いまのところ、もっとも文章を書くのに適している音源は『石川さゆり』(爆)。なぜかはわからない。


(2008.5.1)

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