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不定期宇宙船 No.20

片桐 哲



 いやあ、「今月はコラムのネタがねーな」と困っていたら、 雫石鉄也氏がブログで、「ぐっばいじょー みがぁるごぉ みーお」と叫んでくれた。グッドタイミング。
 好きです、カントリーミュージック。

 北島三郎が「フランスにシャンソン、アメリカにジャズあり、日本に演歌あり」といったことがあるけれど、ちょっと気の利いたことをいおうとしてスベった感じ。
 ジャズはデキシーがルーツの黒人文化。アメリカの大衆のメインストリームはやはり白人文化で、白人にとっての演歌はやはりカントリーでしょう。アメリカで国民的歌手といわれるのは、たいていカントリー出身だし、今日では少し洗練されてブルーグラスなんて呼んだりしてるけど、やはりアメリカ音楽のルーツはカントリーとブルースだよね。
 カントリーなんて、日本のカントリー歌手が鼻にかかったへんな声で歌うつまらない歌というイメージしかなかったんだけど、あるとき、片岡義男がDJを務めていたFM放送番組で流された『テネシーワルツ』に魂を奪われた。
 歌手の名はエミルー・ハリス。初めて聴いた歌でびっくりさせられたのは、他には山崎ハコと門倉有希くらいのものだ。
 さっそく秋葉原で彼女の輸入盤を探したのがカントリーへの入り口だった。同じ棚には見たことも聴いたこともないカントリーのCDが山ほど並んでいた。
 エミルー・ハリスを道標として、カントリーの世界を探検するようになり、その後、リンダ・ロンシュタットやジョン・デンバーなどのひいきも増えた。
 カントリーを聞き慣れてくると、バックバンドのアコースティック楽器が心地よくなってくる。クラシックのバイオリンは興味がないけど、カントリーのフィドルは気持ちいいね。歴史が古いせいもあってか、カントリーのパックバンドには名手が多い。
 アコースティック楽器の再生となれば、これはオーディオの醍醐味でもある。ロックも好きなのだけれど、電気楽器はやたら音がでかいだけで、ダイナミックレンジの狭い録音が多く、オーディオ的には面白みがない。
 しかしたとえば、カントリーの歴史的名盤、ニッティー・グリッティー・ダート・バンドの『永遠の絆』のラストに収められた『青春の光と影』のスチールギター演奏の美しさは比類がない。
 エミルー・ハリスの歌は当然なんでも好きなのだが、ボクのベストワンはアルバム『ROSES IN THE SNOW』に収められた『WAYFARING STRANGER』だ。アメリカ人が歌ってるのに、なぜか諸行無常を感じてしまう(笑)。機会があったら聴いてみてほしい。


(2008.9.1)

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