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不定期宇宙船 No.25

片桐 哲



 このところ、パソコンの自作熱が冷めている。
 パソコンのハードに、わくわくするような新製品も新技術も登場しないし、たんにこれまでの性能が少しアップする程度の製品しかでてこない。
 しかも、部品の性能はオーバースペックといえるほど向上し、高性能部品を組み合わせると、オンライン3Dゲームをばりばりやる以外に使い道がないような高速パソコンができあがる。我々が普通にパソコンを使う場合は、そんな高性能を必要としない。市販のアプリケーションも、そんな高性能を必要としない。
 このコラムを書いているパソコンは7年もまえに造ったもので、OSなどは98だ。そんなチョー低性能のパソコンでも、こうやってワープロとして使い、わからないことはネットで検索し、書き上げたものをHTMLに変換して、メールで星群に送るのに何の問題もない。スピードだって、ストレスを感じるほど遅くはない。
 しかし、メーカーは競争するので、つぎつぎと新製品を造らなければならない。インテルが発売した新CPUは性能も高いが消費電力も大きい。フルに働くと190ワットもの電力をあの小さい集積回路が喰ってしまう
 おかげで自作部品の電源は、ついに出力1キロワット超の製品が店頭に並ぶようになった。パソコンなんだか、電子レンジなんだかよくわからん。どこがエコなんや。ボクの低性能パソコンは400ワットでも余裕があるぞ。
 さすがにまずいと思ったのか、インテルは省エネの低性能低価格のCPUも同時に売り出した。しかし、そいつを積んだ「ヨンキュッパ」の低価格パソコンを台湾や韓国のメーカーが開発し、それが爆発的に売れて、高性能高価格のCPUの足を引っぱるという自己矛盾に落ちた。ははは。
 マイクロソフトもパソコンの性能向上を前提にしてウィンドウズを開発してきた。おかげで、ビスタなどは2ギガのメモリーを積まなければ快適に動かないというクソ重いOSになってしまった。
 そんな重いOSを「ヨンキュッパ」の低性能パソコンに載せるわけにはいかないので、メーカーはXPを使った。せっかくXPを廃版にしてビスタを売り込もうとしていたのに、思いがけずXPのOEM供給が伸びてしまい、マイクロソフトはXPの販売終了を延期するというはめに落ちた。ははは。
 あまりにもビスタの評判が悪いので、2年たらずで新しいウィンドウズが発売される。重い重いといわれたので、こんどのOSは軽くしたそうだ。できるんなら、最初からやれよ。ビスタを買わされたユーザーはどうすりゃいいの。
 サブプライムショックのまえからパソコンの値段は下がり続けていた。景気が悪くなって、ますますパソコンの値段は下がり続けている。メモリーなんて投げ売り状態だ。パソコン事業の採算がとれず、とうとうソニーは電話サポートを有料化してしまった。ソニーのパソコンなんて、ネット上の評判は最低なんだから、さっさとやめりゃいいのにね。
 値段が安くなるにつれ、品質も比例して悪くなってゆく。ディスプレイの品質は落ち続けている。プリンターの品質も落ち続けている。普通、工業製品は未来に向けて良くなってゆくものだと思っていたが、パソコンは違うらしい。やれやれ。


(2009.2.19)

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