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不定期宇宙船 No.29

片桐 哲



 趣味で使っているピュアオーディオの機器が、これまで置かれていた書斎の片隅をぬけだし、ふた月ほどまえに、オーディオ専用室に移動した。
 書斎にオーディオ装置を置いてから、いつのまにか20年近くたってしまった。愛用のプリメインアンプの重量が33キロもあり、動かすのがおっくうで、まったくオーディオセットの模様替えをしなかった。おかげで耳にとどく音がマンネリ化し、聴く時間も少なくなっていた。
 今回、音楽再生空間の条件を変えることで、ちょっとだけオーディオ生活に刺激をあたえようという算段だ。
 専用室といっても6畳の狭い空間だ。しかし よけいな家具を運びだし、室内には、レコードプレーヤー、CDプレーヤー、プリメインアンプをおさめた自作のラックと、左右のスピーカーおよびイスしかない。壁ぎわにはなにもないので、広々としている。スピーカーの後ろにもこれまでより広い空間を作ることができた。
 この部屋で聴く音楽は、ごみごみした書斎で鳴っていた音楽とずいぶん印象が違う。間接音の量が 増えて、響きは豊かになった。反面、音像定位はあいまいな感じがする。まだ設置したばかりなので、スピーカーの配置には改良の余地があるだろう。
 意外な副産物として、レコード再生時のハウリングマージンが増えた。静止したレコードに針を下ろして、アンプのボリュームを上げてゆくと、書斎では15時の位置でハウリングが始まったものだが、この専用室ではボリュームを最大まで回してもハウリングが起こらない。
 理由はよくわからない。書斎の床は板張りで、専用室はカーペット張りだからだろうか。スピーカーの位置を高くするために、20キロのコンクリート板を二枚重ねしたせいだろうか。
 ともあれ、通常はボリュームを12時以上回すことはないので、ハウリングに関しては、まったく心配することはなくなった。
 新しい部屋では、聴きなれたLPやCDが新鮮に聴こえる。またとうぶんのあいだ楽しめそうだ。

 ところで、前回書いたぜいたくなラジオとして使っていたオーディオセットのプリメインアンプが壊れてしまった。
 先月、15日の夕方、夕飯を食べながらラジオ放送を流していた。天気は雨で小さく雷の音が聞こえていた。雷雲は遠いなと思って油断していたら、突然「ドン」と地響きがして放送が途切れてしまった。
 「まさか」とアンプを見たら、グリーンのパワーランプがレッドに変わっている。おどろいて電源を入れ直したが、アンプは復活せずご臨終。ぼーぜん。
 落雷の音の感じからは、わが家への直撃とは思えないのだが、たぶん近くの電線にでも落ちたのだろう。
 いやはや、しかしほんとうに『ゼウスの雷霆』をくらうとは思わなかった。20年使ったソニーの古アンプなので、壊れても惜しくはないけれど、落雷で壊れるとは想定外(笑)
 みなさんも気をつけてくださいね。


(2009.7.1)

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