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チンタオ便り
10回目:久し振りの帰国

堀州美安


 またまた長いことサボってしまった。
 6月以来だから約4ヶ月、なんにも書いてないことになる。
 ネタがないわけではないのだけれど・・・

 さて、国慶節一時帰国のおりの体験から話すとしようか。
 国慶節とは中国の建国記念日、10月1日より1週間が法定の休日となる。春節(旧正月)と並ぶ二大長期休みである。一ヶ月前にチケットの手配をしてもらったのだが、すでに1日は空きなし、仕方ないので二日早めて9月の29日に帰国することにした。(まあモウケモノであったわけだが。)
 一年半にもなるが、いっこう進歩のない中国語、せめて帰国時に中国語の歌でも覚えようと一枚のDVDを無造作に投げ込んでおいた。こちらでDVDプレーヤーを買ったおりにオマケでもらった貴重なDVDだ。なんと400曲超の歌が動画付きで収録されている。テレビにつないで再生しても、けっこう画像はきれいだ。こちらでよく見かける規格にVCDというのがあるが、それではなく確かMP4だったと思う。
 どうして400曲も納められるのか未だに不思議だけれど、まあそれはいいとしよう。
 実はその大事なDVDが没収されてしまったのだ。
 青島空港においてである。
 いつものように金属探知機を抜けると、カバンを開けろというのだ。めったにないこと、やはり例の船長問題の余波だろうかと思いつつ(実は関空でもトランクを開けさせられた)、でも疚しいものは何も入っていないと堂々とチャックを開いたのだが・・・これはダメ!と指で×を作られ、情けなくも取り上げられたであった。
 まさか予想もしなかったから、ほんと無造作に放り込んでおいたのだ。どうやら違法コピー品だからという理由に思い当たったときは後の祭りであった。
 裏面には数本の映画も入っていたから、ほんと悔しいのひとことなのであった。

 ともあれ、今回の帰国は第一日曜も入っていたので、ほんと何ヶ月ぶりかに星群の例会にも参加させてもらった。
 酔虎伝(二次会)の“マイ箸”もちゃんと保管されてあった。ガス灯(三次会)では懐かしの電気ブランもいただいた。(実は、帰国後まっさきに買った本が「有頂天家族」、京都を舞台に狸と天狗と人間が繰り広げる素敵に摩訶不思議なファンタジーなのだが、この物語の影の主役が“偽”電気ブランと、何故か赤玉ポートワインなのである。赤玉はいいとして電気ブランは飲まずばなるまいなのであった。)

 で、その例会(一次会)のおり、大松さんから例のノーベル平和賞の話題を始めて耳にした。
 当然だけど、中国で報道されるわけがない! えつ、そんな人がいるの?って感じで聞いていたんだけど、まさにその直後、まだ日本にいる間に受賞決定の報はマスコミを賑わせたわけだった。
 例会に行ってなければ、まったく知らない話だった。・・・と、これ以上書くとまたまたこちらで星群ホームページ見れなくなる恐れあるので、これで打ち切るが、まあややこしい国ではありますね。
 でもまあ、ついでだから言うと、こちらの連中は一番の日本通である幹部社員でもノーベルのノも知らなかったようだ。

 今回の帰国は9月29日から10月13日と、かなり長い休みを取らせてもらった。
 かねて念願の安倍清明神社に詣でたり、「悪人」を夫婦50割で観にいったり、高齢の父がぶったおれて二度にわたって病院に連れて行ったり、牛窓へ親子旅行をしたり(ここの海鮮バーベキューは最高に美味しかったけど、帰りはひどい渋滞だった)、前の会社の連中と飲み会したり、大津祭(カラクリ人形が見物の故郷の祭)で旧友とはしゃいだりと、一通りのノルマを果たしたらアッという間の2週間であった。

 ここはせっかくのチンタオ便りだから、大阪の火鍋で締めくくろう。
 数ヶ月だけどこちらでご一緒したFさんとはよく地元の火鍋屋に行った。火鍋とは中国の代表的な鍋料理、唐辛子と山椒をドバッと入れたスープに肉・海鮮・野菜をどばどば抛り込んで食す。こちらへ来たしょっぱなに連れて行ってもらったときは、夜中に腹痛を起こして、しばし蹲っていた思い出の料理である(あの店はたぶん特別激辛ではあったのだろうけど)。
 ところが、こいつがヤミツキになるのだ。
 鍋は真ん中で仕切ってあって、半分は辛味なしの白湯スープ、辛いのが苦手な人はこちらで食べる。F氏はもっぱら白湯であったが、僕はせっせと中国人を真似て辛いほうで食べていた。(実のところ、絶妙なゴマダレで辛味は緩和され、白湯だけでは頼りない。)
 そんなF氏と久々に再会するにあたって選んだのが宗右衛門町の火鍋屋、ネットで調べて決めた。
 鍋のスタイルは本場とまったく同じだった。店長はもちろん中国人、確か在日4年目だといってた。小太りのにこやかなおニイさんである。そこへお手伝いか何か正体のよく分からない(中国人の)おネエさんがふたり入ってきたと思ったら、他に用事があるからと出て行ったと思うと、また戻ってきたりする。
 なんだかまだ中国にいるような雰囲気で、ビールを頼むのに、つい“ピージョー・リャンガー”とか言ってしまう。
 辛味は日本人向けに加減してあったとは思うが、味は本場とほとんど変わりなかった。基本的に違うのは食材の選択。宗右衛門町の店では5千円食べ飲み放題コースで、確か食材は三十数種だったと思うが、すべてお任せである。(予約はFさんにお願いしたので、このあたりアヤフヤではあるのだが。)
 ひるがえって、中国本場はというと、食材は客が自分で選ぶのだ。各種の魚介、肉、野菜が市場のように展示されている。水槽には蟹も厳かに蹲っている。客はそれらの中から好みの食材を、これとこれとこれというふうに選んでいくのだ。
 食べ放題なんて必要ない、一人前がとてつもなく多いからグループでしか食べに行けない。
 そして決定的に違うのが、当然だけど値段! 香港だとか上海は知らないけれど、ここでは腹いっぱい食べて飲んでも昼定食程度にしか付かない。
 ついでに言うと、この田舎町でも日本料理の店はあって(何故か韓国料理街の一角にあって、やってるのは横浜で修行したとかいう中国人)、納豆なんてのも食べられる。でも、値段もまた日本並みなのである。
 
 写真2枚添付します。食材の並んでいるのが本場、鍋は宗右衛門町、興味のある方はぜひ一度ご賞味あれ!

本場大阪

 
 青島に戻って、はやひと月、ようやくの脱稿。
 
2010年11月13日

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