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チンタオ便り
3回目:ビールと啤酒

堀州美安


8月16日、青島国際ビール祭(啤酒節)に行ってきた。
 今年で19回目だとか、昨年こそオリンピックの関係で日程をずらしたらしいが、今年は例年通り15日(土)から30日(日)までの開催、酒飲みのはしくれとしては行かずばなるまいである。ちょうど日本から短期出張で滞在中のK君と出かけることにした。(短期出張といっても、もともと中国歴は4年もある青年、そこそこに中国語もこなす。)
 前夜の土曜日、5時に仕事を終え、日本人の経営するSホテルにチェックイン。夜の祭も興味津々だったが、いつにない渋滞ぶりから帰路が危ぶまれたので、翌日、白昼堂々といくことにした。土曜の夜は晩飯のあと日本人クラブ、つまり日本語の話せる中国人ホステスのいるカラオケ・スナックへ――このあたりは日本式の延長なので省略する。
 翌朝、といっても昼に近い時間帯だが、ホテルの朝食を済ませていざタクシーに乗り込む。ここには青島ビール博物館という観光スポットもあるのだが、祭の会場は逆方向のラオシャン区、変換できないのでカタカナで書いたが、山偏に労の字でラオそして山がシャン(以下、労山と記す)、道教の霊山をバックに控えた広場である。
 見事に快晴、しかしそのぶん日差しは刺すようだ。入口で売っていた麦藁帽を買う(10元≒150円)。入場料は昼の部(3時まで)が10元で夜の部が20元。まあ安いものだ。
 しかし、入場してからはそうはいかない。とりあえず最初に出会ったハイネッケン館で黒ビールの中ジョッキーを手にしたのだが、これが日本円にしたら1000円近くしていた。日本でなら驚く値段でもないが、ここは青島なのである。
 ここらで、こちらのビール事情に触れておこう。
 330mlの缶ビール1本が、日本円にして30円から50円というのが日常的相場なのである。高いほうの50円が看板ビールの青島啤酒、安いほうの代表格は労山啤酒、ただしアルコール度も低い(青島で4.3%、労山で3.1%)。そして、冷やして飲むという習慣がない。ビール祭も暑いばかりで生ぬるいビールを高い金払って飲まされるだけ・・・と、あんまり嬉しくない情報を聞かされていたのだが、ジョッキーはしっかり冷えた液体で満たされていたのでまずは一安心であった。
 さて、祭である。
 ひとことでいえば、ビールに借りたテーマパーク、各種絶叫マシンが空を切り裂き、地上ではダーツや輪投げなど、日本でいうところの縁日の賑わいである。もちろんメインは世界中から終結したビールメーカーのパビリオン――とはいっても巨大テントを張り巡らせたオープン施設なのだが。各施設では、中央に舞台をしつらえ、歌あり、マジック・ショーあり、はたまたお笑いあり、合間にはファッション・ショーでつなぐという、まあ音響がうるさくて自分の声も聞き取れない。リズムはここでも打ち込みシンセのズチャズチャズチャタカ調、中国民謡もポルカもかけらさえない。
 どれだけのビール会社が出店しているのか数えてないので分からないが、圧倒的にドイツ系、そして台湾も含めた中国と韓国、オーストラリアからBPも出張してきていたが、でも日本やアメリカのブランドはついに見かけなかった。試飲というサービスがないので、結局ハイネッケンとチンタオの生、一杯ずつしか飲めなかったのは残念であった。
 日差しはきついし、歩くばかりでもくたびれるしと思っていたら、場内を一周する連結車両の車が発車を待ち構えていたので、それに乗ることにした。風を感じながらゆっくり一周する。ミニ観光巡りだ。日本でなら必ず見かけるぐったり不機嫌な家族連れなどどこにもいない。みんな雰囲気を楽しみ、雰囲気を演出している。。
 とにかくまだまだ娯楽の少ない国である。インドやかつての日本のように娯楽の王様、つまり映画はまったくの端役でしかない(知ってる限り、映画館は一軒しかない)。そのくせカラオケやネットカフェは田舎町にもある。何かいびつだ。だからなのか、みんなで楽しむとなると、休日にそぞろ歩いたり、凧揚げに高じたりとなる(そのあたりの話はまた書くことにしよう)。だから、ビールであれ何であれ、祭は祭であるだけでハレの日なのだろう(“高度経済発展期”の日本を想起せよ)。
で、一日本人としての感想だが、一言でいってしまえばたいしたことない、二度まで行こうとは思わない・・・である。でもこれはイベント擦れした日本人の視点、中国の人たちにとっては家族連れはたまたカップルで楽しむまたとない娯楽、行楽なのである。
 まあ、写真でも見て、多少とも雰囲気を感じ取ってください。
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2009年8月30日

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