「なんせんすSF特集」ということである。なにがナンセンスなのか、どこがナンセンスなのか、もひとつコンセプトがよく判らぬ特集である。と、いうわけでこの号の海外作品は「なんせんす」なSFを集めたということである。
「火星をまわる穴・穴・穴」火星。岩に穴が開いている。向こう先が見える。その穴は大きさも、地上からの距離もみんな同じ。この穴ずっと遠くまで開いている。なんだこの穴。
「せまい谷」こういう特集ならラファティは絶対欠かせない。その土地は、クラレンス・ビック・サドルのものだった。この土地に税金なんか払えるか!その土地を手に入れた男がいる。もちろん普通の土地ではない。
「主観性」その宇宙旅行には16年かかる。乗組員は数年で気が狂う。なんとかならないか。ドラッグだ。幻覚に包まれて旅すればいいのだ。
「ウェンズディの子供」その女の子は、毎年歯が生え変わり、年に一度の盲腸の手術が欠かせない。しかもその子にはヘソがない。なんなんだ彼女は。
「ザ・ビッグ・スペース・ファック」1979年アメリカは「大宇宙おまんこ」「ザ・ビッグ・スペース・ファック」を計画した。この計画は宇宙のどこかで人類を存続させようという目的。アンドロメダ銀河星系に向けて、精液(スパーム)を発射すると発表した。―そういうものだ。
以上が「なんせんすSF特集」である。やっぱりラファティが一番面白かった。
で、あとは日本作家作品が4本。
「征東都督府」連載開始である。元、かもめ、笙子といったおなじみの面々の光瀬のタイムパトロールもの。日比谷公園に「日本人禁止進去 大清国征東都督府」なる立て札。古物商の元は不思議な紙幣を手に入れた。どうも清国の古い札らしいが、清国でそんな紙幣が発行されたことはない。
「取りて喰らえ、これは我が體なり」破滅後、人類は小人リリパットになった。冷凍睡眠から覚めたらリリパットたちに取り囲まれた。初期の田中光二作品としては異色作。
「夏の旅人」夏子は大きなお屋敷に一人暮らし。旅の絵描きと知り合った。絵描きは彼女の屋敷にしばらく滞在することに。絵描きの描いた絵を見て、夏子はおどろいた。彼女の幼いころの情景が描かれている。妹の冬子がやってくる。冬子にはその絵は違って見える。
「流氷民族」連載2回目。快調である。消えた謎の美女を追う主人公。その美女が10年以上前の新聞の写真に写っている。10代後半と思われる「眠れる美女」が、今と変らぬ姿で。同一人物か。彼女は年を取らないのか。
(2015.10)