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SFマガジン思い出帳 第102回

雫石 鉄也







1974年11月号 No.192

掲載作

征東都督府(第1回)
光瀬龍
火星をまわる穴・穴・穴
矢野徹訳 ジェローム・ビクスビイ
せまい谷
浅倉久志訳 R・A・ラファティ
主観性
風見潤訳 ノーマン・スピンラッド
ウェンズディの子供
谷口高夫訳 ウィリアム・テン
ザ・ビッグ・スペース・ファック
伊藤典夫訳 カート・ヴォネガット・jr
取りて喰らえ、これは我が體なり
田中光二
夏の旅人
田中文雄
流氷民族(第2回)
山田正紀
大河漫画
鳥人大系 第15章 かもめのジョンガラさん
手塚治虫
連載評論 幻想小説の方へ 
夢の言葉・言葉の夢 第14回 たんぽぽ白書(その2)
川又千秋
日本SFこてん古典 第20回 
ひろいっく・ふぁんたじー「緑人の魔都」
横田順彌
SFスキャナー
センス・オヴ・ワンダーへのアプローチ
風見潤
思考の憶え描き 連載19
風船計画
真鍋博

「なんせんすSF特集」ということである。なにがナンセンスなのか、どこがナンセンスなのか、もひとつコンセプトがよく判らぬ特集である。と、いうわけでこの号の海外作品は「なんせんす」なSFを集めたということである。
「火星をまわる穴・穴・穴」火星。岩に穴が開いている。向こう先が見える。その穴は大きさも、地上からの距離もみんな同じ。この穴ずっと遠くまで開いている。なんだこの穴。
「せまい谷」こういう特集ならラファティは絶対欠かせない。その土地は、クラレンス・ビック・サドルのものだった。この土地に税金なんか払えるか!その土地を手に入れた男がいる。もちろん普通の土地ではない。
「主観性」その宇宙旅行には16年かかる。乗組員は数年で気が狂う。なんとかならないか。ドラッグだ。幻覚に包まれて旅すればいいのだ。
「ウェンズディの子供」その女の子は、毎年歯が生え変わり、年に一度の盲腸の手術が欠かせない。しかもその子にはヘソがない。なんなんだ彼女は。
「ザ・ビッグ・スペース・ファック」1979年アメリカは「大宇宙おまんこ」「ザ・ビッグ・スペース・ファック」を計画した。この計画は宇宙のどこかで人類を存続させようという目的。アンドロメダ銀河星系に向けて、精液(スパーム)を発射すると発表した。―そういうものだ。
 以上が「なんせんすSF特集」である。やっぱりラファティが一番面白かった。
 で、あとは日本作家作品が4本。
「征東都督府」連載開始である。元、かもめ、笙子といったおなじみの面々の光瀬のタイムパトロールもの。日比谷公園に「日本人禁止進去 大清国征東都督府」なる立て札。古物商の元は不思議な紙幣を手に入れた。どうも清国の古い札らしいが、清国でそんな紙幣が発行されたことはない。
「取りて喰らえ、これは我が體なり」破滅後、人類は小人リリパットになった。冷凍睡眠から覚めたらリリパットたちに取り囲まれた。初期の田中光二作品としては異色作。
「夏の旅人」夏子は大きなお屋敷に一人暮らし。旅の絵描きと知り合った。絵描きは彼女の屋敷にしばらく滞在することに。絵描きの描いた絵を見て、夏子はおどろいた。彼女の幼いころの情景が描かれている。妹の冬子がやってくる。冬子にはその絵は違って見える。
「流氷民族」連載2回目。快調である。消えた謎の美女を追う主人公。その美女が10年以上前の新聞の写真に写っている。10代後半と思われる「眠れる美女」が、今と変らぬ姿で。同一人物か。彼女は年を取らないのか。

(2015.10)
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