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SFマガジン思い出帳 第11回

雫石 鉄也







1968年6月号 No.108

 今回は少し未来人としての優越感にひたってみよう。この号、いまからちょうど40年前のSFマガジンである。四つ昔も前。お若い人たちにとっては、ご当人はもちろん、その親たちでさえ生まれていないかもしれない。えらい大昔である。と、いうことは今は、あれから40年未来ということになる。
 タイムマシンはなくとも未来へは行ける。現に小生はこうして、40年未来に来た。ただし、40年かかったが。
 
 この号の創作は
    継ぐのは誰か?(第1回)小松左京
    美女と5人の夫たちフリッツ・ライバー
    月の犬アーサー・C・クラーク
    瞬間を貫いて(リレー連作4)アナトリイ・ドニュブロフ
    愛情惑星石原藤夫
    メカニストリアエリック・フランク・ラッセル
 小生の人気カウンターのベスト3は
    1 メカニストリア
    2 継ぐのは誰か?
    3 愛情惑星
 と、記録している。

 この当時、SFマガジンは「さいえんすとぴっくす」なる科学ネタのコラムを連載していた。最新の科学情報を紹介するコラムである。
 この号のこのコラムから面白いものを二つ紹介しよう。

「ポータブル光線電話機」
 無線は傍受される恐れがある。その心配のない、絶対に送信者と受信者以外はわからない、画期的な通信機ができた。
 送信者はピストルみたいな送信機で、受信機めがけてレーザーを発射。送信者の声はレーザーの強弱に変換される。受信者はレーザーの強弱を受信機が再変換した送信者の声を聞く。
 要するに、ぎやまんによる光の合図をレーザーにしたもの。レーザーは透過性に優れているから霧、雲、雨でもへっちゃら。電気の通信じゃないから電信柱もいらん。未来の通信だ。  

「あすのマイホーム電信」
 電話は、情報が速く伝わるが電話代がかかる。手紙は書いたものが相手に届くのだから情報が確実だが、届くのに時間がかかる。そこで、手紙と同じぐらい確実に、電話と同じ速さで情報が送れる通信方法が開発された。
 タイプ通信文を紙テープに打つ。この紙テープを装置にかけ、電話線で送信。受信側がテープをタイプにかけると通信文が出てくる。
 1秒に20字という相当なスピード。ハガキ1枚分を1分で送信できる。

 どうです。これが40年前の「未来」だったんですね。光ファイバー通信とインターネットを知っている私たちは、立派な未来人なわけだ。よかったよかった。タイムマシンがなくても未来に来れた。


(2008.3)

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