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SFマガジン思い出帳 第112回

雫石 鉄也







1975年9月号 No.202

掲載作

派遣軍還る(連載開始)
光瀬龍
アイランド博士の死
浅倉久志/伊藤典夫訳 ジーン・ウルフ
霧と草と砂と 
沢ゆり子訳 ヴォンダ・N・マッキンタイア
愛はさだめ、さだめは死
伊藤典夫訳 ジェイムズ・ティプトリーJr.
亜空間要塞の逆襲(完結)
半村良
宇宙のランデヴー(第3回)
南山宏訳 アーサー・C・クラーク
無色の時代(コスミコミケ5)
米川良夫訳 イタロ・カルヴィーノ
空飛ぶヴォルプラ
浅倉久志訳 ワイマン・グイン

未踏の時代―回想のSFマガジン―
福島正実

日本SFこてん古典 (第29回) 
古典SFQ&A・2 
横田順彌
思考の憶え描き (第29回)
椅子計画
真鍋博
SFスキャナー
いかがわしきマイナー作家たち
岡田英明

大図解 遥かなる銀河辺境
スタジオぬえ

 この号の特集企画は「恒例 1974年度ネビュラ賞特集」ごらんのようにジーン・ウルフ、マッキンタイヤ、ティプトリーJrと、クセ者3人が並んでいる。
「アイランド博士の死」ノヴェラ部門受賞。アイランド博士の治療を受ける3人。少年ニコラス、殺人狂イグナシオ、若い女ダイアン。ここはどこ?アイランド博士ってだれ?
「霧と草と砂と」ノベレット部門受賞。三匹の毒蛇をあやつる美女。彼女は何をしている?
「愛はさだめ、さだめは死」ショート・ストーリイ部門受賞。「人間」が一切登場しない小説。「人間が書けてない」と直木賞の選考でいつもいってた渡辺淳一が読んだらなんというだろう。この時点(1974年)ではティプトリーは男だと思われていた。以上、3作が1974年のネビュラ賞。なお長編部門受賞作は、連載中のクラーク「宇宙のランデヴー」
「派遣軍還る」光瀬のこのタイトルの作品は二つある。「宇宙塵版」と、この「SFマガジン版」連載1回目だから状況説明。開始早々光瀬節全開。
「亜空間要塞の逆襲」連載終了。亜空間要塞の正体はバーミューダ・トライアングルか?シメはほとんど半村の私小説。
「宇宙のランデヴー」「円筒海」の探検を行う。
「無色の時代」面白くない。
「空飛ぶヴォルプラ」ヴォルプラ、それは天使か?翼を持つ小動物ミュータント。
「未踏の時代」SFのオニ福島正実のスペオペに対する複雑な感情が垣間見えて面白い。福島は本音はスペオペは嫌いだったのだろう。でも、スペオペは商売になる。そのことが福島にもよく判ったわけだ。
 この号でマレイ・ラインスターの死が報じられている。享年78歳。17歳で作家になっていたというから、60年以上作家だった。すごい作家だったわけ。ラインスターは。
 次号10月号はヒューゴー賞特集。アメリカSFのてっぺんが見えるかな。


(2016.10)
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