先月号はネビュラ賞特集であった。この号はヒューゴー賞特集である。ティプトリー、エリスン、ル・グィンと、当時のアメリカSFのてっぺんが見える企画である。このうち、ティプトリーはネビュラ、ヒューゴー両方を受賞している。しかも違う作品で。才能ある作家の登場が話題を呼んだ。しかも、この当時のティプトリーは覆面作家。男性作家と思われていた。彼女の正体はもっとあとになって知れる。
ジェイムズ・ティプトリーJr。本名アリス・ブラッドリー・シェルドン。女性。年老い認知症を患った夫をショットガンで射殺。その場で、その銃で自分の頭を撃ち抜いて自殺。享年71歳。
「派遣軍還る」「地上へもどろう」こう主張するデモにまきこまれたシンヤ。地上ははたして当局がいうような放射能と有毒ガスが充満しているのか?そしてシンヤは調査局に行き着けるか。
「接続された女」ノヴェラ部門受賞。みんなのあこがれを集める女。じつはブスだった。「接続」されているからアイドルなんだ。
「死の鳥」ノヴェレット部門受賞。遠未来で「聖書」を再現。ところどころに「テスト」が入る。エリスンらしいはったり。今年になってこの作品が表題作となる短編集が出た。41年ぶりである。気の長いことだ。
「オメラスから歩み去る人々」ショート・ストーリイ部門受賞。オメラスは理想の町。しかし、ただでそうなっているわけではない。
「追いこされた時代」過去の「未来」が現代にやって来た。広告屋制作マンのどたばた。
「ムムシュ王の墓」その墓をあばく者はすべて災いにあう。その呪いに現代の科学で挑む。
「ヒガンバナ」ヒガンバナは死んだ人の化身か。
「いくら賭ける?」原子かいな。
「荒涼たる地にて」ピーダースンは目は見えなくとも火星の夜はわかる。
「広くてすてきな宇宙じゃないか」作者17歳の時のデビュー作。短いが印象に残る作品。小笠原豊樹訳。なんとすてきなタイトルじゃないか。
「未踏の時代」SF作家クラブ設立の趣旨と顛末。福島正実と柴野拓美の対立。福島はプロの自覚。柴野はアマの矜持。このエッセイで福島は柴野を「敵ながらあっぱれ」とほめる。
ロッド・サーリングの死去が報じられている。心臓発作。享年50歳。「ミステリー・ゾーン」よく見た。
(2016.11)