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SFマガジン思い出帳 第116回

雫石 鉄也







1976年1月号 No.206

掲載作

派遣軍還る(第5回)
光瀬龍
地球軍独立戦闘隊
山田正紀
ク・メルのバラード
司須美子訳 コードウェイナー・スミス
許されざる者 エーリアン・メモIV
田中光二
帰り道
真木俊一訳 シオドア・スタージョン
ポンゴが来た
五代格
テスト
鈴木導訳 リチャード・マティスン

ウルトラスーパーデラックスマン
藤子不二雄
日本SFこてん古典 番外編
ぼくの亜米利加旅行(後)
横田順彌
クニ・ファンタスティカW 
暗号=Cipher+Code
深井国
SFスキャナー
機械の影で
ジーン・ヴァン・トロイヤー


 この号は別段特集はない。通常の号である。連載が1本、読み切りが5本。漫画が1本。その中のウリは180枚一挙掲載の「ポンゴが来た」ではないだろうか。五代格、よく知らない名であった。確かSFマガジン2度目の登場ではないか。小生の記憶に間違いがなければ、この作家。日本SFノヴェルズから書き下ろし長編「クロノスの骨」が出ている。
 SFマガジンに180枚一挙掲載、処女長編が書き下ろし。早川がこの五代格なる作家にかけた期待の大きさがよくわかる扱いである。その五代、SFマガジンには1975年2月号に「時間遡行機5号カプセル」があるだけ。小生の知ってる限りでは読み切り短編2編と長編1冊だけを残して、われわれSF者の前から姿を消した。ほぼ同じころデビューした田中光二、山田正紀、かんべむさしらと違って日本SFの戦力とならなかった。
 小生は「クロノスの骨」は未読。「時間遡行機5号カプセル」と、この号の「ポンゴが来た」を読んだが、なぜすぐ消えたかよく判った。SFとしてピンと来なかった。五代さんには悪いがヘタなのだ。正直「ポンゴが来た」180枚読むのが苦痛であった。上にあげた3人のデビュー作。田中光二「幻覚の地平線」山田正紀「神狩り」かんべむさし「決戦!日本シリーズ」と読み比べてもらうとよく判る。
「派遣軍還る」ついに船団が還って来た。320隻もの大船団が。着陸を開始する。ところが帰還船からはなんの連絡もない。無人か?
「地球軍独立戦闘隊」太平洋戦争末期。南の島。なぞの美女を守るため日米のパイロットが共同作戦。零戦とグラマンF6Fが編隊を組んで「炎の戦闘機(フーファイター)」と戦う。
「ク・メルのバラード」ク・メルは猫の娘。おもてなし嬢。
「許されざる者」UFO研究家外山はUFOを目撃した少女と会いに行く。そこで不思議な男と会う。ジョン・エナリーである。
「帰り道」ポールは家出した。いろんなヤツと会う。ポールはいう「ぼくは家に帰るんだ」
「ポンゴが来た」流刑島。脱出者は行方不明。XとPはこの島を探る。オランウータンを殺人に使う邪悪な集団。岩淵慶造が描くイラストの女が色っぽい。
「テスト」年寄りにはテストを課す。不合格ならば・・・。
「ぼくの亜米利加旅行」ヨコジュン、足を痛めながら亜米利加を旅する。
 たまたま話題にした五代格、田中光二、山田正紀の3人がこの号にそろっている。小生のつたない紹介では判りにくいかもしれないが、五代と田中、山田の差は歴然。五代が消え田中、山田が残ったのが判るだろう。
 ずいぶん五代格の悪口を書いたが、別に小生は五代に遺恨はない。面白くない小説を読まされて腹が立っているだけである。

(2017.2)
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