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SFマガジン思い出帳 第119回

雫石 鉄也







1976年4月号 No.209

掲載作

派遣軍還る(第8回)
光瀬龍
消滅の光輪(後篇・その1)
眉村卓
マンドリル 続・街の博物誌パート6
河野典生
まわる世間に
かんべむさし
かわいた風
横田順彌
宇宙のランデヴー(最終回)
アーサー・C・クラーク 南山宏訳
深森譚―流山霧太郎の妖しき伝説―
今日泊亜蘭
輪廻の蛇
R・A・ハインライン 井上一夫訳
クニ・ファンタスティカVII 
暗号=Cipher+Code
深井国

未踏の時代―回想のSFマガジン
福島正実

北アメリカ・SFの旅(その2)
伊藤典夫
読切コミックス劇場A
幸運児
藤子不二雄
SFスキャナー
大ナンセンス小説登場!
LEO


 この号はとくだん特集企画もない、ルーティーンワークの号であった。こういう号の質が、その雑誌が持っている基本資質ではないか。
 柱となった作家は3人。大ベテラン今日泊亜蘭。それにSF作家クラブに入会したばかりの若手横田順彌とかんべむさし。第2世代の代表的な作家である。この二人の共通点は多い。作家になる前の職業が広告屋さん。二人とも落語に造詣が深い。横田は大学は落語研究会。かんべは大学は広告研究会であったが筋金入りの上方落語マニア米朝一門との親交もある。そして二人ともSF大会で落語を実演したことがある。二人の作品は基底に「笑い」の要素を持っていること。
「派遣軍還る」放置された人工惑星《ダリア21》から、なにか飛行体が飛びたった。
「消滅の光輪」惑星ラグザーンに巡察官がやって来た。ついに「あれ」を司政官マセにいう。
「マンドリル」黒い顔、青いほほ、赤い口まわり。マンドリル・ファッションがはやっている。
「まわる世間に」交通標識のポールに飛びついてグルグル回る遊びが大ブームに。今年の4月7日の神戸新聞夕刊のコラムで「ポーリング」と題して(この遊びをポーリングという)山下洋輔さんが書いている。山下さんの目の前で、かんべむさし氏と堀晃氏の二人がポーリングを実演したとか。40年も前のことだが、憶えている人は憶えているのである。
「かわいた風」地球の未来を叙情的に描く。お笑いなし。あのヨコジュンがこんな作品を書いていたのだ。
「宇宙のランデヴー」最終回である。ラーマ太陽系を去る。ラーマとはなんだったんだ。
「深森譚」「北海道共和国」での話。月夜野銀次郎脱獄す。
「輪廻の蛇」ハインラインの伝説的時間モノ短篇がこれ。ハインラインの一発芸
「北アメリカ・SFの旅」伊藤典夫がカナダで世話になったボブ・アルマーのこと。ボブは早稲田に留学していた。日本語が堪能。日本滞在中に山口百恵の大ファンに。日本を離れるまでにボブを百恵ちゃんに会わせようという算段が。本職がテレビ屋さんの野田大元帥のつてで実現。ボブはあこがれの百恵ちゃんに会ったとさ。この号の46ページにボブと百恵ちゃんのツーショットの写真が。
「未踏の時代」自分の死が判っているような記述がある。福島は1976年の4月9日に亡くなった。この号が店頭に並んだのは1976年3月25日。それから2週間で亡くなった。 

(2017.5)
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