1972年12月号 No.167
この号の掲載作品は次の通り。
産霊山秘録(完結編) | 半村良 |
水星に太陽が | ロバート・シルバーバーグ |
追憶売ります | フィリップ・K・ディック |
遂行への指令 | ウォルター・M・ミラー・Jr |
最高兵器 | ジョン・クリストファー |
幻覚の地平線(前編) | 田中光二 |
白い環 | 荒巻義雄 |
連載漫画
新・幻魔大戦 | 石森章太郎+平井和正 |
鳥人大系 | 手塚治虫 |
ディックの「追憶売ります」は後に映画化された。シュワルツネッガー主演の「トータル・リコール」の原作がこの作品。
期待の大型新人登場、ということで、田中光二がこの号でデビューした。デビュー作は掲載作の「幻覚の地平線」
小生は、一読し、ハタと手を打った。これは正に小生の好みにぴったりの作家が出てきた。ルビを多用したスタイリッシュで、まるでハリウッド映画を観るような、映像的な文章。いわゆる日本の純文学の対極にあるような、 エンターティメント性の高い小説だ。作者の紹介を読んで、田中光二は純文学作家田中英光の息子さんだと知って、以外に感じると同時に、ある程度納得したしだい。
小生は、日本伝統の「純文学」は嫌いで、エンタティメント性の高い冒険小説が大好きで、ハリウッド映画が好き、車好き。山より海が好き。「純文学」はともかくとして、後に田中氏が出したエッセイ集「ぼくはエイリアン」を読んで、この作家、なんとまあ、小生の好きなものとダブルところの多い作家であることかと、大変にうれしく思った。しかも、小生の好きな西村寿行と対談して意気投合されているではないか。
小生が田中光二ファンになったのはいうまでもない。追っかけをしていた。田中光二は小生の期待に答えるように、次々と作品を発表して行った。SFはいうまでもなく、冒険小説、カーアクションなどなど。ほとんどの作品を読んだ。特にお気に入りが海洋SF3部作。海大好き人間のSFファンとしては痒いところに手が届くようなSFだった。
そして田中氏のカーアクション小説も好きだった。それまで日本のカーアクション小説といえば大藪春彦。小生は大藪も西村寿行と同じぐらい好きだが、大藪カーアクションはメカの描写が主眼だが、田中カーアクション小説は、車のメカよりも、それを操る「男」の描写に主眼が置かれていた。
すっかり田中光二ファンとなった小生が、第3回星群祭の実行委員長をやることになった。田中光二氏をゲストとして招待した。星群祭出席を快諾していただいた。そして小生は田中光二氏ご本人とお会いした。その人はまさしく「田中光二」だった。
田中氏がSFを書かなくなって久しい。もう一度田中光二SFを読みたいな。お願いしますよ。田中さん。戦記シュミレーションもいいけれど、SFや冒険小説もまた書いてくださいよ。
(2008.4)
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