この号の特集は「宇宙のエロス」かってSFにとってエロはタブーであった。
セックスをあつかったSFはなかった。考えてみたら、これは不思議なことで、人間の営み、森羅万象、およそ、この世の事物の全てがネタになるSFにおいて、人類の生殖活動に関わる事物をタブー視するのはがてんがいかぬことである。これはアメリカでのSFの勃興期、SFは子供の読み物とされ、エロは絶対のタブーとされていたからだろう。その突破口を開いたのは、ご承知の、フィリップ・ホセ・ファーマー「恋人たち」である。1953年の作品だ。それから23年経った1976年日本のSF専門誌で、かような特集が組まれたのである。
日本SFはアメリカSFとは違い、その勃興期、子供を意識しないSFであった。子供向けのSFは、ジュビナイルとして早いうちから確立されていた。
さて、そのエロス企画の作品は次の5編である。
「クローン・シスター」彼らはみんなクローンだった。
「もう一人のイブ」男同士のラブ。薔薇族的SF。
「グループ」みんなでセックス。特定の異性とのセックスはタブー。
「失われた世界」スタージョンのホモ小説。
「デイ・ミリオン」ドラとドンの愛の物語。かわいい娘とたくましい男。愛を交わすにはスイッチをONしなくちゃ。
以上。5編のうち2編はゲイがテーマ。エロスをテーマとしているが、あくまでSFであってポルノではないので劣情を誘うモノはなかった。
「派遣軍還る」最終回である。シンヤたちがたどり着いた物体には推進装置が装備されていた。そこからシンヤだけがひきあげる。
「冬の記憶」思いだす。海底の歌を。作者20歳のデビュー作。
「雪だるま効果」社会学部廃止。社会学部主任教授。社会学を使って裁縫サークルの会員を増やしてみせる。
「消滅の光輪」司政官マセ、科学センターから派遣されてきてるランの調査行に協力する。拒否はできるが科学センターも持ち駒の一つとしたいとの思惑が。
1976年4月9日SFマガジン初代編集長福島正実が亡くなった。死因は細網肉腫。享年47歳。ゆえに「未踏の時代」は未完となった。石川喬司、小松左京、半村良、深町真理子、星新一、光瀬龍、矢野徹が追悼文を寄せている。
(2017.7)