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SFマガジン思い出帳 第123回

雫石 鉄也







1976年8月号 No.213

掲載作

消滅の光輪(第7回)
眉村卓
抱腹絶倒王
アレクサンドル・ベリャーエフ 深見弾訳
雷同者の群
M・ズーエフ=オルドゥィネツ 深見弾訳
ソッスの船
アレクサンドル・グリーン 深見弾訳
建国の父
クリフォード・D・シマック 谷口高夫訳
ダイヤモンドは洗うべからず
フィリップ・ホセ・ファーマー 浅倉久志訳
巨人の棲む星
キース・ローマー 風見潤訳
失われた技術
ジョージ・O・スミス 大村美根子訳
啓示
キャロル・エムシュウィラー 川口幸子訳

北アメリカ・SFの旅(その6)
伊藤典夫

八月のメモランダム
万里村ゆき子 新井苑子イラスト
日本SFこてん古典(第35回)
ふたつの古典SF新資料
横田順彌
星座の歳時記(新連載)
硫酸の雨が降る―金星
日下実男

グランドマーク(新連載)
スタジオぬえ
SFスキャナー
復活した男 アルフレッド・ベスター
真木俊一

 特集は「ソビエト・クラシック」ソビエトSFの古いのを紹介している。「抱腹絶倒王」「雷同者の群」「ソッスの船」の3編がそれ。解説は、もちろん深見弾。ソビエトSF(というかロシアSF)の歴史は古く、SFと確認できる作品が出版されたのは、1840年。ヴェ・エフ・オドエフスキー「四三三八年―ペテルブルク書翰」がそれ。ロシアには革命前にもSFがあったわけ。今回紹介された3編は革命直後のソビエトSFである。
「抱腹絶倒王」スポルディングの商売は「笑」を売ること。
「雷同者の群」類人猿を労働者に使う。
「ソッスの船」〈ビット=ボーイ〉がソッスの港に帰って来た。だれでもビット=ボーイは大歓迎だ。
 英米英語圏SFに慣れた読者にとって、ソビエトSFはとっつき難いかも知れないが、案外、読みやすい。現代のロシアSFも紹介する必要あり。今のSFマガジンがその任にあたるべきだが、正直、今の堕落したSFマガジンでは期待がうすい。
「消滅の光輪」連載7回目となる。この作品、当初の著者の構想が大きく成長し、眉村卓の代表的超大作となる。このあたりの経緯は筆者(雫石)は眉村本人からリアルタイムで聞いている。
 ソビエトSF3篇に連載1本。あとの5篇はアメリカSFである。ソビエト、日本、アメリカ、バランスの取れた編集である。
「建国の父」6人はその星に「王国」をつくろうとした。
「ダイヤモンドは洗うべからず」手術した。患者の脳にできていたのは腫瘍ではなくダイヤモンドだった。
「巨人の棲む星」才人キース・ローマーのハードな冒険SF。不時着した惑星には住人が1人。その住人は巨人だ。(阪神や広島ではない。冗談)
「失われた技術」それは火星人の技術か?
「啓示」浮浪者がいる。娘のニーナに近づく。これはイカン。
「北アメリカ・SFの旅」今回は伊藤典夫がアメリカ滞在中に見た映画いろいろ。伊藤、サミュエル・R・ディレーニーに会う。愛称チップ。身長172,3cm。小太り。黒縁メガネ。当時、名の知られているSF作家ではゆいいつの黒人作家である。

(2017.9)
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