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SFマガジン思い出帳 第134回

雫石 鉄也







1977年7月号 No.224

掲載作

アメリカの壁
小松左京
白き神々の座にて
田中光二
ブラックホール惑星
石原藤夫
大正三年十一月十六日
横田順彌
わがホモンクルス
半村良
螢(ほたる)
石川喬司
ケルベルス嵐の日
今日泊亜蘭
コルクの部屋からなぜ逃げる
山田正紀
消滅の光輪(第18回)
眉村卓
パラダイスキノボリヘビ
河野典生
リモートセンシング
野田昌宏
女と女の世の中
鈴木いずみ
出勤 
星新一
みな殺しの歌が聞こえる
矢野徹
ニコルスキーの空間
荒巻義雄
迷宮の風 
堀晃
上下左右 
筒井康隆
免許コンサルタント
豊田有恒
天国の飲物 
高斎正
来たりて破壊するもの
鏡明
ファンタジア領
山尾悠子
SFコミック
オヤジロック
藤子不二雄
エッセイ
私のUFO
光瀬龍
やじうまメモ・ノート
かんべむさし
私をSFに狂わせた画描きたち
ジェイムスン教授の肖像(その1)
野田昌宏
星座の歳時記(第12回)
こと座の環状星雲
日下実男
日本SFこてん古典(第46回)
古典SFあれやこれや
横田順彌
SFスキャナー
ある社会主義国のSF
深見弾
ワンダーランドへようこそ(新連載)
ギャラクタス参上
鎌田三平

 日本作家特集の特大号である。488ページ。掲載作家23人。読みごたえたっぷり。で、価格は1150円。作家一人当たり50円。ちなみに最新号の2018年8月号は掲載作家10人。価格1296円。作家一人当たり129.6円。SFマガジンは原稿料が安いという話をよく聞いたが。なるほど、こういうことか。それと最近のSFマガジンのスカスカぐあいもよく判ろうというもの。
「アメリカの壁」アメリカが物理的に孤立。周囲は白い霧。通信交通途絶。アメリカは自己完結できるが。キーは大統領の名前。 
「白き神々の座にて」ヒマラヤに雪男を探しに。そこに「あの男」がいた。エーリアン・メモ・エキストラ。
「ブラックホール惑星」ブラックホールはブラックホールの樹に成っている。お茶漬けにして食うとうまい。
「大正三年十一月十六日」3人の文豪が芦ノ湖でボートに乗る。押川春浪、時に38歳。
「わがホモンクルス」半村良、ホモンクルス缺如者と認定。 
「螢(ほたる)」長い髪の着物を着た女性がカルタ屋に。和泉式部のデザインがきにくわない。
「ケルベルス嵐の日」ひよっこ新兵にいじめられている用務員は、かっては腕ききの郵送船のパイロットだった。
「コルクの部屋からなぜ逃げる」作家マルセル・プルーストは執筆用にコルク貼りの部屋を作った。不思議な女性が出現。
「消滅の光輪(第18回)」具体的な退避計画が動き出した。司政官協力者表彰パーティー直前に暴動発生。
「パラダイスキノボリヘビ」女の子はいった。「あのヘビ飛ぶよ」
「リモートセンシング」衛星が撮った写真。富士山を中心に不思議な同心円が写ってた。
「女と女の世の中」絶滅危惧種「男」が家の外を歩いていた。
「出勤」出勤して仕事して帰ってくる。どこへ、どこから?
「みな殺しの歌が聞こえる」超能力者集合。許せぬ悪を殺す。スラン、エスパイ、破壊された男、など名作超能力SFせいぞろい。
「ニコルスキーの空間」失踪した編集者が持っていた論文。それはブラックホールの存在を論じた天才のモノだった。
「迷宮の風」その惑星の内部には縦横に洞窟がいっぱい。その中で行方不明になった教授を救出する。
「上下左右」隣は、上は下は?4階建てマンション。それぞれの部屋でいろんなことが同時進行でおこる。並列パラレル小説。
「免許コンサルタント」コンサルタントシリーズ。今回は動物飼育コンサルタント。
「天国の飲物」その惑星のモノは充分に熟成して、けっこうな飲み物になった。
「来たりて破壊するもの」貧乏な修道士ヨアン、少年のような剣術使いジョッシュと会う。
「ファンタジア領」えーな山尾悠子。それしかいえない。山尾悠子のレビューはここで小生が駄文を綴るより、読んでもらうのがいちばん。
 質量とも、たいへんに読みごたえのある1冊であった。この号1刷で満腹である。ごちそうさま。
(2018.8)
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