1970年6月号 No.134
掲載作
思考の谺 ジョン・ブラナー
星のオルフェ フレッド・セイバーヘーゲン
衛星船通過 シオドア・L・トーマス
地球一の幸せもの ジャック・ウィリアムスン
タイトル未定 半村良
イカルスの翼 堀晃
鳥は数をかぞえない ミルドレッド・クリンガーマン ビタミン 筒井康隆
不死販売株式会社 ロバート・シェクリイ
「イカルスの翼」は堀さんのデビュー作。それまで、ファンダムでは実績も経験もある堀晃さんは、SFマガジンのこの号で商業誌デビューした。この時は、まさか、後年、堀さんと早川の間で、あんな係争が勃発するとは思いもしなかった。堀さんは、今でも、早川書房と、係争勃発時の編集長今岡清を許していない。
堀さんは、SFもんとして小生が敬愛する先輩の一人である。また、早川はあまた有る出版社の中で、大切な出版社という位置付け。SFマガジンも同様。
こういう両者に不幸な関係が続いていることに、小生は心が痛む。堀さんのホームページを読むと、堀さんが今岡清、弁護士の五十嵐敬喜を生涯許すことができないのは理解できる。でも、あれから30年近い年月が流れた。早川書房もSFマガジン編集部も様変わりしただろう。堀さんの新作がSFマガジンで読める日が来るのだろうか。
この号は1970年の4月25日に発行されている。この1ヶ月ほど前、3月14日に日本万国博覧会が大阪府吹田市の千里丘陵にて開催された。
「トータルスコープ特別版」ということで、大伴昌司が「SF作家万国博をゆく」と題してルポを書いている。主に星新一が万博を見てまわるのをレポートしたものだが、そこはそれ、なんせあの星さんのこと。無邪気に素直に喜ぶはずがない。毒のある星ジョークが冴え渡る。
中小企業合同出品の生活産業館で、「不渡り手形を出した会社の社長の首吊り人形が展示してあるぞ」
専売公社の虹の塔で、「肺癌パビリオンだな」
地方自治体館で、「農協さんがお葬式やってるぞ。焼香していこう」
キューバ館で、「へんだなオレたちがCIAの大株主だとバレたな」
小生は、この万博、日参した。20回近く行っただろうか。ほとんどのパビリオンを見た。若かったんだな。まだ足も痛くなくて、元気だったんだな。
アメリカンパークという広場があった。そこにアメリカの鶏の空揚げ屋が店を出していた。食べた。ものすごくおいしかった。お昼はここで、鶏の空揚げばっかり食っていた。これがケンタッキーフライドチキンの実験店。日本で初めてケンタッキーフライドチキンが食える店である。だから、小生はケンタッキーフライドチキンの日本での客としては、ごく初期の客となる。別に自慢にならないが。それにしても当時はこれがおいしかったんだな。今はケンタッキーフライドチキンは、まず食べない。鶏の空揚げが食いたければ、自分で揚げる。その方がおいしい。
(2008.8)
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