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SFマガジン思い出帳 第20回

雫石 鉄也







1972年2月号 No.156

この号の掲載作

HAPPY BIRTHDAY TO .・・・  
小松左京
註釈の多い年譜  
筒井康隆
枯れた時間  
眉村卓
有袋惑星花決闘  
豊田有恒
不定愁訴  
福島正実
紺屋町御用聞異聞  
光瀬龍
常識  
星新一
子供の情景  
河野典生
アチラ  
石川喬司
システム化惑星  
石原藤夫
5号回線始末記  
野田昌宏
散歩道の記憶   
半村良
スペース・オペラ  
山野浩一
柔らかい時計  
荒巻義雄
宇宙の牢獄   
高斎正


 ご覧のように大変盛りだくさん。2月号恒例の創刊N周年記念特大号。この号は12周年。日本SF作家総登場ということで、かくもにぎやかな内容となったしだい。この他、手塚治虫、藤子不二雄、水野良太郎、松本零士の漫画まで掲載されている。これで誌代が420円だから、ものすごくお徳用。
 それはそうとして、前回、SFのWBCアメリカ代表チームを作ったが、今回は、日本の代表チームを発表する。日本のSF作家全員が候補というとあまりに漠然とするので、いちおう基準を設けた。まず、オーナー以外は戦前の作家は除外。あまり若い作家も候補にいれると収拾がつかないので、デビュー30年以上の作家とした。
    オーナー 江戸川乱歩
    球団社長 今日泊亜蘭
    監督   矢野徹
    コーチ  柴野拓美
         福島正実
       
    1番 センター  星新一
    2番 3塁  豊田有恒
    3番 1塁  光瀬龍
    4番 レフト  小松左京
    5番 ライト  半村良
    6番 2塁  眉村卓
    7番 ショート  石原藤夫
    8番 キャッチャー  野田昌宏
    9番 ピッチャー  筒井康隆
       
    守護神 平井和正
    中継ぎ陣 堀晃
       かんべむさし
      横田順彌
    右の代打  山田正紀
    左の代打  田中光二

     こういうので、どうだろうか。まず1番、星新一。長打は少ないが、確実に安打を製造する安打製造機。確実にチャンスを作る。日本SFのトップバッターというと星新一以外に考えられない。
     2番、豊田有恒。長打は少ないが、器用なバッターである。和風ヒロイックファンタジーという、3塁線ぎりぎりを破る独特のバッティングを持っており、つなぎのバッティングに徹する。
     3番、光瀬龍。「百億の昼と千億の夜」などの大ホームランを打つ。「年号シリーズ」をはじめ、和製宇宙SF打法は、チャンスメイクもできるし、キメのバッティングもOK。ジュビナイルも書くから守備も堅実。
     4番、小松左京。日本を代表するホームランバッター。「日本沈没」「果てしなく流れの果てに」など、年間50本以上は確実に期待できる。「女シリーズ」のような、しぶい安打も打てる。
     5番、半村良。伝奇小説というジャンルを開拓した好打者。「妖星伝」「伝説シリーズ」などの、多くの人気シリーズを抱える、勝負強い打撃は5番バッターにふさわしい。
     6番、眉村卓。堅実な守備の名2塁手。社会派SFのバッティングも魅力の上、司政官シリーズは確実に走者をホームにむかえ入れる。加えて、「消滅の光輪」「引き潮の時」「不定期エスパー」などの特大ホームランも打てる。
     7番、石原藤夫。日本を代表するハードSFバッター。長打は少ないが「惑星シリーズ」で、下位打線からもチャンスメイクが期待できる。インデックス類の編纂で守備力は随一。
     8番、野田昌宏。「銀河乞食シリーズ」などでバッティングも捨てがたいが、スペオペの伝道師であり、SFファンのお手本のような人。守備の要たるキャッチャーはこの人以外にいない。
     9番、筒井康隆。稀代の変化球ピッチャー。クセ球、魔球、危険球、剛速球。どんな球を投げてくるか分からない。相手からすれば、こんなやっかいなピッチャーはない。
     リリーフエース、守護神平井和正。「狼男シリーズ」「幻魔大戦シリーズ」などの160キロを超す剛速球を投げる。まさに守護神の名にふさわしい。
     


    (2008.12)
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