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SFマガジン思い出帳 第26回

雫石 鉄也







1968年11月号 No.114

掲載作
継ぐのは誰か?(第6回)
小松左京
ダークパワー 
平井和正
時は金 
マック・レナルズ
最後の爆発 
エリック・フランク・ラッセル
前頭葉 
ノーバート・ウィナー
グランド・セントラル駅 
レオ・ジラード
新人アンダースン 
ロバート・S・リチャードスン
惑星ゾルの王女 
ニール・R・ジョーンズ

 このうち「前頭葉」「グランド・セントラル駅」「新人アンダースン」の3作は、科学者SF特集ということで、科学者が書いたSF。この中で一番有名な作者はノーバート・ウィナーだろう。SF者のお歴々には釈迦に説法だが、サイバネティックス理論の創始者で、20世紀の重要な科学者の一人。ま、エライ先生なわけ。ところが、この作品は小生の人気カウンターでは最下位にしていた。面白くなかったのだな。今回、このコラムを書くために、40年ぶりに読み直してみた。やっぱり面白くなかった。エライ先生ではあるがSFはヘタなのだ。
 連載の「継ぐのは誰か?」は別として、「最後の爆発」と「惑星ゾルの女王」が面白かった。
「最後の爆発」 謎のウィルスが発生して植物が全滅。食料がなくなって人類は、ごくわずかな人数を残して死滅。月基地に残った七人の男たちは、異星人に連れられ地球へ。そこには生き残った人たちが。異星人の目的はなにか。
 小生は神戸在住。あの新型インフルエンザ騒動の真っ只中にいた。この作品の前半は、謎のウィルスが蔓延して人類が絶滅。このたび読み直していて、大昔の作品ではあるが、こりゃあタイムリーじゃわいな、と思って読んだ。絶滅テーマかと思ったが、話はまったく予想とは違う方向へ展開する。
「惑星ゾルの王女」 ジェイムスン教授シリーズ。ゾル星人の手で頭脳を機械に移植されたジェイムスン教授。四角い胴体に円錐型の頭。ひらひらしたマニピュレーターを持つ機械人となった教授は、ゾル星人たちと宇宙を大冒険。という典型的な娯楽スペオペ。
 この作品は、敵惑星に拉致された惑星ゾルの女王の彼氏を救出するため、教授は仲間のゾル星人と、敵惑星に乗り込んで大暴れ。実に楽しい能天気な作品。翻訳はもちろん野田大元帥。こういう破天荒で能天気な勢いが現代SFにも必要ではないかと考える。いやあ、SFって面白いんですね。

(2009.6)
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