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SFマガジン思い出帳 第29回

雫石 鉄也







1968年5月号 No.107

掲載作
10月1日では遅すぎる(最終回)
フレッド・ホイル
邪学法廷
筒井康隆
魔界へ来た男
豊田有恒
ブラック・モンスター
平井和正
瞬間を貫いて(第3回)
アリアドナ・グロモア
ホビイ
エリック・フランク・ラッセル
英雄は死んだ
キース・ローマー

「10月1日では遅すぎる」が最終回。この作品は面白かった。早川の文庫で出ていたようだが、今はもう絶版だろう。作家ではなく、科学者が書いたSFとしては、小生が読んだ中では一番面白かった。再版を望む。
 日本人作家3人の中で、「ブラック・モンスター」が印象に残っている。サイボーグ特捜官シリーズの1篇。平井和正のサイボーグ特捜官というと、8マンが人口に膾炙しているが、本編の主人公アーネスト・ライトは、8マンこと東八郎とはキャラがぜんぜん違う。ライトは東ほど生まじめじゃないが、秘めた情念はライトの方が深い。どちらかというと、8マンより犬神明に近いように思う。
 ラッセルの「ホビイ」。ラッセルは、人類家畜テーマで代表作「超生命ヴァイトン」ぐらいしか、パッとは思い出せず、どちらかというと忘れられた作家だが、昔のSFマガジンにはよく短編が載っていた。いかにもSFSFした、宇宙モノのアイデアストーリーで読んで楽しい短編が多い。この「ホビイ」も、不時着した惑星で遭遇するおかしげな生き物、という古き良き宇宙SFの楽しさあふれる1篇。
「英雄は死んだ」のローマ−は、娯楽アクションSFの名手である。この作品も、エイリアンの手先であるとの嫌疑をかけられた男が、味方から追われ、特殊な技能を発揮しつつ危機をかいくぐり、身の潔白を証明しようとする。スパイ活劇。白土三平の「カムイ外伝」といってもいいかも知れない。
 トータルスコープのページで、某映画会社のある映画に関しての宣伝部の意向が紹介されている。
「これはSFではありません。現実に起こりうる科学の物語で、SFとはまったく関係ありませんから、SFとは書かないでほしい」
 この年の春、最高のSF映画「2001年宇宙の旅」が公開された。某映画会社とはMGMのこと。ある映画とはもちろん「2001年宇宙の旅」のこと。MGMはこんなアホだから経営が斜めになったのだ。今から41年前のことだけど、何年たってもアホはアホ。ここにMGMの不明をさらしものとする。そして、何度でも書く。「2001年宇宙の旅はSFである」「2001年宇宙の旅はSFである」「2001年宇宙の旅はSFである」「2001年宇宙の旅はSFである」「2001年宇宙の旅はSFである」

(2009.9)
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