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SFマガジン思い出帳 第3回

雫石 鉄也







 1969年2月号 No.117
 「九周年記念特別増大号」として日本作家特集をやっている。連載は豊田有恒の「地球の汚名」の第2回目。日本人作家ばかり13作が掲載されている。第1期のSFプロパーの作家は総出演である。他に推理作家が何人か。中にはオヤッと思う人もいる。旅ミステリーの第1人者西村京太郎がSFマガジンに書いていた。今では考えられない。
 この号の目玉はなんといっても覆面座談会。後に日本SF界に大きな波紋をもたらすことになる座談会である。当時の編集長福島正実が早川書房を去る遠因ともなった。
 読み返してみたが、確かに辛口の批評をされている作家もいるが、小生の判断では許容範囲ではないかと思う。ただし、それは2007年の今だからいえること。1969年という時代を考えると、日本のSFはまだまだ発育途上で、世間の認知も充分とはいえない時代だった。そのような時代、身内ともいうべきSFマガジンで、しかも覆面で厳しいことをいわれたわけだから、背後からいきなり斬りつけられたとの作家の怒りは理解できる。この座談会そのものは肯定できるが時期尚早といえよう。
 掲載時この座談会の出席者はある程度推測できたが、はっきりとはしなかった。後の作家たちの反応からプロパーのSF作家は一人も入っていないとは分かっていた。それがこのたび読んだ最相葉月さんの『星新一1001話をつくった人』で出席者全員が判明した。38年ぶりに謎が解明したしだい。それは誰かはここでは書かない。知りたい人は同書を読んでください。
  

(2007.7)

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