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SFマガジン思い出帳 第30回

雫石 鉄也







1968年7月号 No.109

掲載作
継ぐのは誰か?(第2回)
小松左京
9月は30日あった 
ロバート・F・ヤング
影と閃光 
ジャック・ロンドン
死のドーム 
ウォルター・ミラー・ジュニア
瞬間を貫いて(第5回) 
ナタリア・ソコロワ
虹は消えた 
眉村卓
獏くらえ 
久野四郎
いやらしい地球人 
フレデリック・ポール
異星人ステーション 
デーモン・ナイト

「虹は消えた」いかにも眉村卓な経済SF。アフリカの小国の経済の立て直しを、日本の企業が請負った。流通する通貨を増やし、消費を拡大する手法で経済の活性化を図る。しかし、それはインフレを伴う危険が。会社の仕事として一国の経済を担うことになった男。男はその国の王妃に見込まれ、国になくてはならない存在となる。しかしそれはあくまで会社の仕事としてやっている業務だ。
「いやらしい地球人」アメリカ軍兵士のピンキーは軍隊の鼻つまみ者。軍の物資を私物化するなど、小悪事を繰り返すが、ずるく要領が良いから捕まらない。このころ地球はシリウス人の植民地だった。人類の多くがシリウス人の奴隷になっていた。奴隷といっても、束縛は少なく自由が多い奴隷だ。ピンキーはシリウス人にもうまく取り入り、奴隷仲間の顔役になる。
 ピンキーはシリウス人の喜ぶことをするが、それがシリウス人の敗退につながる。結果として、小悪党ピンキーの行為が人類を解放する。ブラックユーモアなファーストコンタクトSF。
「異星人ステーション」これは傑作だ。虚空に浮かぶ宇宙ステーション。そのステーションの番人は一人。仕事は20年に一度やってくる異星人のお世話をすること。お世話といっても身の回りの世話をすることではない、いや、お世話というより、異星人に何かをしてもらい、それの管理をするのが仕事。
 話し相手は、言葉をしゃべるコンピュータだけ。宇宙の真ん中でぽつんと1人。近くの生き物はわけの判らん異星人、話し相手のコンピュータは杓子定規な石頭。痛いほどの孤独感がよくでていた。で、地球人はこの異星人に何をしてもらっているのか。また、異星人は何をしにくるのか。
 ところで、デーモン・ナイトは日本の「ガマの油」を知っているのだろうか。ガマがたら〜りたら〜りと流す油が、この話のヒント。

(2009.10)
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