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SFマガジン思い出帳 第31回

雫石 鉄也







1968年8月号 No.110

掲載作
継ぐのは誰か?(第3回)
小松左京
パラサイト惑星 
石原藤夫
スラリコ・スラリリ
眉村卓
あれ 
福島正実
初任務出世宇宙立 
豊田有恒
瞬間を貫いて(第6回)
セーウェル・ガンソフスキー
安すぎる家 
リチャード・マティスン
証言 
エリック・フランク・ラッセル
赤死病 
ジャック・ロンドン

 この号で、C・S・リュイス、キングズリイ・エイミス、ブライアン・W・オールディスの3人が「未知の大地」と称して鼎談をやっている。編集はシンポジウムとして記事にしているが、そんな大そうなもんではない。気軽な鼎談である。エイミスとオールディスが、モートン大学のリュイスの研究室を訪問して話し合ったものを録音して記事にしたもの。
 リュイスが一番年長でモノ書きの先輩。なかなかおもしろい鼎談だ。なかでもコミックについて言及しているのが、三者三様でおもしろい。
オールディス
「SFとコミックがいっしょにハカリにかけられ、軽視されていた時代もあったが、それは脱した」
エイミス
「コミックはSFの追求しているテーマを、低俗な形でむしかえしている」
リュイス
「まったく無害だ。コミックの道徳上の危険をとやかくいうのはナンセンス。問題にすべきは漫画家のひどい技術だ」
 さすがリュイスは年長者だけあって大人だ。現代の日本の漫画とSFに、この3人の言葉を当てはめると面白い。
「パラサイト惑星」石原藤夫の惑星シリーズなれど、いつものヒノシオコンビではない。ヒノは、相棒のシオダではなく、新妻のマツリカと二人で、例によっておかしげな惑星に探査におもむく。今回は知性を持った植物の悩み事の相談にのる。
「初任務出世宇宙立」こういう気軽に読める短編も、小生は好きである。年間傑作選に載るような大傑作もいいが、肩の力の抜けた軽い短編も雑誌には必要だろう。
「赤死病」感染すると最短15分で死ぬ。致死率90パーセント以上。2013年、恐るべき伝染病「赤死病」が蔓延。人類文明はあえなく崩壊。
 それから60年。生き残りの老人が、赤死病の発生から、蔓延、人類文明の終焉を、孫たちに語る。次々と感染が広がり、街に死体が累々となり、数少ない生き残りの人々は小グループを作る。このあたりの描写はさすがに迫力。だが、具体的にどういう病気なのか、身体が赤くなって死ぬとしか、表現されていない。小松左京の「復活の日」と比べると少々物足りないが、この作品の眼目は病気の描写ではなく、文明が終焉した後に、どういう世界が来るかを書くのが眼目。人々の立場が逆転した世界。上流階級のセレブな人が、人にこき使われる辛い立場に。かって使用人だった男が、グループのリーダーとなって人々を支配する。資本家階級が下に、労働者がリーダーに。このあたりに作者の感情が出ていて面白い。

(2009.11)
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