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SFマガジン思い出帳 第33回

雫石 鉄也







1968年12月号 No.115

掲載作
        
継ぐのは誰か?(最終回)
小松左京
幽霊第五惑星
矢野徹訳 ロバート・シェクリイ
ゲン
眉村卓
埃まみれのゼブラ
小尾芙佐訳 クリフォード・D・シマック
コフィン療法
深町真理子訳 アラン・E・ナース
オムニリンガル
浅倉久志訳 H・ビーム・パイパー
魂の重さ(前篇)
北村良三訳 アンドレ・モーロワ

 この号の大伴昌司担当「トータルスコープ」にて、ロジェ・バディム監督ジェーン・フォンダ主演の「バーバレラ」が紹介されている。この映画まごうことなきスペースオペラ。小生、思うに「スターウォーズ」が出てくるまで、この「バーバレラ」が最も楽しいSF映画であった。
 世界SF全集がこの年の10月から刊行開始。第1回配本の広告が載っている。第1回はオルダス・ハックスリイ「すばらしい新世界」、ジョージ・オーウェル「1984年」新世界SF全集の企画が進行しているらしい。期待する。
 掲載作では、連載の「継ぐのは誰か?」は別として、「幽霊第五惑星」「ゲン」「オムニリンガル」「魂の重さ」が面白かった。
「オムニリンガル」火星で火星人の大規模な遺跡が発見された。滅び去った火星人の文明を理解するためには、残された古文書を解読する必要がある。火星の文字の解読は困難を極める。
 考古学SF。舞台は別に火星でなくても、エジプトやマヤでも成り立つ話だが、「火星」というだけでワクワクしたものだ。昔は。作者のH・ビーム・パイパーは不勉強にて小生は知らない作家。小生の記憶に間違いがなければ、SFマガジンにこの作家の作品が掲載されたのは、この1作だけ。
「幽霊第五惑星」シェクリイのAAAエース惑星消毒サービスもの。意識の具象化というSFおなじみのネタ。シェクリイらしい楽しいアイデアストーリー。恐いもんから逃れるにはこれがいちばん。
「ゲン」平和を保つため戦争を継続するという皮肉なストーリー。組織の中の個人という眉村SF不変のテーマも抱合する好短編。
「魂の重さ」フランスの文豪アンドレ・モーロワのSF。生き物に魂はあるか。あるのなら質量があるはず。魂の質量を検出する装置を開発する医学者。この号は前篇。後編は次号。少々かったるいが、読ませる。

(2010.1)
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