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SFマガジン思い出帳 第36回

雫石 鉄也







1969年5月号 No.120

掲載作
        
地獄のハイウェイ(後編)
浅倉久志訳  ロジャー・セラズニイ
市2220年 
光瀬龍
ロボット外科医 
小尾芙佐訳 ハーラン・エリスン
悪夢は夜来る 
久野四郎
願い星叶い星 
矢野浩三郎訳 ジャック・ウィリアムスン
地球の汚名(第5回)
豊田有恒

「地獄のハイウェイ」後半に入って主人公のヘル・タナーが、すっかりヒーローになってしまった。前半のならず者の魅力が薄れた。そのかわりアクションシーンが増えた。タナーが運転する特殊装甲車に襲いかかる族のバイクの群れ。このあたりは後年の映画「マッドマックス2」を彷彿とする。
「市2220年」おなじみ光瀬節。宇宙開発に多大な功績を残しつつも、身体に障害を負いサイボーグとなった男たち。火星の東キャナル市は地球の2大陣営のどっちにつくかで苦悩する。
「ロボット外科医」完璧な医療用ロボットが開発された。外科手術もロボットが行う。人間の医者はロボット医者の助手となる。人間を治せるのは人間だけとの信念を持った主人公の外科医。エリスンとしては、非常にまっとうなブラック・ジャックみたいな話。
「悪夢は夜来る」久野四郎のホラーは読ませる。復活して欲しい作家だ。
「願い星叶い星」家族にもうとんじられる、さえない中年男。頭の中に隕石のかけらが入る。それから不思議な能力を手に入れる。その能力を使って、父親としての威厳を取り戻そうとするが。奇妙な味のホラ話。
 矢野徹が、架空匿名座談会「SF界に新風よ吹け!」を書いている。大問題になった、1969年2月号の覆面座談会騒ぎの沈静化を図っている。大人の矢野徹がまあまあまあと、みなをいさめる。
 この号は飛び抜けた傑作もないかわりに、読むのが苦痛な駄作もなかった。どの作品も一時の読書の喜びを約束してくれる。特にウィリアムスンなどは、さすがベテランの職人芸だ。すらすら読ませる。

(2010.4)
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