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SFマガジン思い出帳 第41回

雫石 鉄也







1970年2月号 No.130

掲載作
        
袋小路
小松左京
クロスコンドリナ2
光瀬龍
たぬきの方程式
筒井康隆
コレクター
星新一
親殺し
平井和正
マヤに咆える象
豊田有恒
移植旅行
畑正憲
フニフマム
眉村卓
生きている海
石原藤夫
虹の彼女
山野浩一
赤い酒場を訪れたまえ
半村良
パストラル
河野典生
可愛い女
福島正実
十二月の鍵
浅倉久志訳 ロジャー・セラズニイ
大時計
大野二郎訳 ラングドン・ジョーンズ
リトル・ボーイ再び
伊藤典夫訳 ブライアン・W・オールディス
ドオベルマン
手塚治虫
7P A・べスターに
石森章太郎 

 創刊10周年記念特大号である。昔のSFマガジンは、創刊N周年記念として、毎年2月に特大号を刊行していた。また、秋には臨時増刊号を出していた。通常号だけでも、25日が待ちきれず、ワクワクしながら読んでいた。それが秋に1冊多く出て、暮れの12月にはいつになく、ぶっといSFマガジンが読める。このころの小生は、12月は大晦日やお正月もさることながら、この分厚いSFマガジンが大きな楽しみだった。
 この号は、10周年とキリの良い記念号。日本人作家オールスターである。第一世代のSF作家は、ほぼこれで全員ではないか。えーと、あとだれか抜けていたかな。
 海外作家3人はにゅううえーぶ特集。この3作のうちで一番の問題作は、なんといってもオールディスの「リトル・ボーイ再び」だろう。核開発100年記念のイベントとして、広島にもう一度原爆を落とそうという。なんとも悪趣味かつ無神経で皮肉な作品。これがなんで「新しい波」なのかよく判らないが。
こんな日本人の神経を逆なでするような作品を書いたオールディスは、この年に開催された国際SFシンポジウムのため来日している。オールディスのくせものパワー炸裂といったところか。
 後年「ムツゴロウシリーズ」で売れっ子になった畑正憲がSFを書いている。「移植旅行」がそう。小生、この人物が大嫌い。動物好きを売り物にしている。
本当の動物好きなら、自分で飼わず、野生のままそっとしておく。
 半村良の「赤い酒場を訪れたまえ」は、半村の出世作「石の血脈」の原型となった作品。「石の血脈」は大変おもしろい小説だが、この短編はさしておもしろくない。しかし、日本の伝奇ロマンの水源地とういうべき意義のある短編だ。
 小松、星、筒井、眉村、豊田、平井、石原たちのプロパー作家は、いかにもそれぞれの作家らしい短編。あと、手塚さんの読みきり短編。野田さんのエッセイなど、顔見せ興業的な特別増大号らしい、にぎやかな号であった。
(2010.9)
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