1970年3月号 No.131
掲載作
不死販売株式会社(第1回) 加藤喬訳 ロバート・シェクリイ
赤方変移の仮面 浅倉久志訳 フレッド・セイバーヘーゲン
天国へ還る 荒俣宏訳 シオドア・スタージョン
最後通牒 鏡明訳 キイス・ローマー
人類の進化 石原藤夫
ぶりきの家政婦 関口幸男訳 ロバート・ブロック
角笛の響き 三田村裕訳 ロバート・ムーア・ウィリアムズ
逃亡の惑星 伊藤典夫役 A・E・ヴァン・ヴォクト
このころのSFマガジンは充実している。このコラムを書くため、40年ぶりに古いSFマガジンを再読しているのだが、憶えている号もあるし、憶えていない号もある。正直、この号のことは忘れていた。で、このたび再読してみて感心した。なんと充実した雑誌であることか。特大号でも、臨時増刊号でもない、ごく普通の通常号である。良い短編SFを出来るだけ沢山掲載しようという、編集の明確な意志が感じられる。だから連載長編は1本だけである。
現在のSFマガジンは、このころ、1970年代の編集方針を見習って欲しい。何本もの連載を同時に掲載。PRかタイアップ企画か判らない特集。今の清水編集長になってちょっとはマシになったが、以前の塩澤編集長時代はひどいものだった。
さて、今号の掲載作だ。シェクリイの「不死販売株式会社」の連載開始。この作品は、短編SFの名手シェクリイの最初の長編。
「赤方変移の仮面」狂戦士シリーズ。狂戦士が人間に化けてパーティー会場にもぐりこんだ。さてどうなる。
「天国へ還る」スタージョンの臭いがプンプン。スタージョンファンにはたまらない短編。なんとキャラの立った宇宙人であることか。
「最後通牒」レティーフシリーズ。ローマーらしく軽快に読める。地球侵略を宣言したエイリアンはいうほどワルイやつじゃなかった。
「人類の進化」めずらしや石原博士のショートショート。ちょっとだけ内輪ネタも入っていたりして。
「ぶりきの家政婦」人間の悪妻より、ロボットの女(ロボットに性別はないだろう。女型ロボット)の方がよっぽどいい。
「角笛の響き」火星で火星の文明を研究している主人公に客が。客は研究所のスポンサーの大富豪。客は主人公に、私個人の研究者になれという。火星の文明は金の成る木か。
「逃亡の惑星」追われる吸血宇宙人が地球に着いた。追う方も地球に着いた。人知れず繰り広げられる暗闘に一人の記者がまきこまれた。ヴォクトらしいエンタティメントSF。やっぱりヴォクトは面白い。
石森章太郎の連載コミック「7P」は第7回。「レイ・ブラッドベリに」という献辞。石原藤夫の新連載科学コラム「SFロボット工学入門」が始まった。
野田昌宏「SF美術館」は「オリジナルSF誌の画家たち」エド・エムシュたちを紹介。伊藤典夫の「SFスキャナー」1969年度ヒューゴー賞詳報。ロバート・シルバーバーグ「夜の翼」が受賞している。
(2010.10)
|