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SFマガジン思い出帳 第44回

雫石 鉄也







1970年5月号 No.133

掲載作
        
火星人の方法 
小尾芙佐訳  アイザック・アシモフ
非常警報 
矢野徹訳   ジェイムズ・ホワイト
不法侵入者 
関口幸男訳  フィリップ・K・ディック
星新一の内的宇宙 
平井和正
詩 
伊藤典夫訳  レイ・ブラッドベリ
消えていく 
荒俣宏訳   A・E・コッパード
空飛ぶフライパン 
大野二郎訳  ロバート・F・ヤング
黒い犬 
鏡明訳    チャールズ・G・フィニイ
果てへの旅路 
団清二訳   フリッツ・ライバー
壁に影が・・・ 
矢野浩三郎訳 シオドア・スタージョン
不死販売株式会社(第3回)
加藤喬訳   ロバート・シェクリイ

 ご覧のように、連載も入れて11篇。これに戸倉正三のハガジン・ショートショートが掲載されている。にぎやかな号だ。「ファンタジイ・ファンタジイ」特集ということで、ブラッドベリ、ヤング、スタージョンとF派よりの作家が並ぶ。この号も充実している。
「火星人の方法」水不足の火星。水は必需品。宇宙船の燃料も水を使う。水は地球からの供給が頼り。地球政府が水の供給を断つと通告。そこで火星人は、火星人ならではの手段で水を手に入れる。
「非常警報」宇宙人が地球にちょっかいをかける。そのため地球の平和が・・・。
「不法侵入者」侵入者が地球の領域シリウス星系から盗み取ったものとは。
「星新一の内的宇宙」伝説的なショートショート。最相葉月の大作も星新一の実像に迫っているが、このショートショートも星新一を活写している。
「詩」最高の詩人。詩に書けば具象化する。あまり知られていないブラッドベリの名品。
「消えていく」フランスを旅する3人。車のスピードメーターがおかしな具合だ。故障ではない。そのうち、だんだん、消えていく。
「空飛ぶフライパン」かわいらしい宇宙人。ヤングらしいせつない話。
「黒い犬」ホラー。黒いリトリヴァーが生き物を襲う。
「果てへの旅路」いろんな生き物が行列を作ってどっかへ行く。こいつら何物?どこへ行く。ライバーの短編はいいなあ。
「壁に影が・・・」継母は空想することさえ許さない。
 荒巻義雄の「術の小説論‐私のハインライン論」が掲載されている。「術」こそSFの本質か。この評論が荒巻のデビュー作。
 野田昌宏「SF美術館」のまくらで、大阪万博に言及。「下手なSFイラスト見るより万博会場をウロウロする方がよっぽど未来を感じる」
 この号の目玉はアシモフ「火星人の方法」だが、いまだに強烈な印象に残っているのが「星新一の内的世界」伝説の星ジョークの一端を垣間見ることができる。

(2010.12)
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