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SFマガジン思い出帳 第45回

雫石 鉄也







1970年6月号 No.134

掲載作
        
 思考の谺
ジョン・ブラナー
 星のオルフェ
フレッド・セイバーヘーゲン
 衛星船通過
シオドア・L・トーマス
 地球一の幸せもの
ジャック・ウィリアムスン
 タイトル未定
半村良
 イカルスの翼
堀晃
 鳥は数をかぞえない
ミルドレッド・クリンガーマン
 ビタミン
筒井康隆
 不死販売株式会社 第4回
ロバート・シェクリイ


 この号で最長の作品は、連載のシェクリイは別として、ブラナーの「思考の谺」なかなか読みごたえがあった。主人公は若い女性。彼女は最低の生活をしている。酒びたりで一文なし。自殺する気力さえない。安アパートに暮らしているが、なぜか大家は家賃を取り立てない。ロンドンが舞台の作品だが、異星とリンクしている。その接続点が主人公の彼女。
「星のオルフェ」狂戦士シリーズ。イザナギ、イザナミ神話のSFバージョン。このセイバーヘーゲンの狂戦士シリーズはこのころ盛んに紹介されていた。
「衛星船通過」米ソ対立の見本みたいな作品。アメリカとソ連の衛星船が軌道上で接近。このままでは衝突。しかし双方とも国の威信をかけた意地がある。絶対に道は譲れない。今見るとバカみたいな作品。
「地球一の幸せ者」標本採集の異星人。標本になれという。そのかわり、好き勝手させてくれるという。
「タイトル未定」長編の企画書。半村良の長編でこんなのは知らない。半村良はショートショートは苦手なのでは。
「イカロスの翼」堀晃のデビュー作。水星軌道より内側を通る小惑星イカロスに流刑になった男。いかにして生きのびるか。
「鳥は数をかぞえない」もうひとつ印象に残っていない作品である。
「ビタミン」ビタミンはいかに発見され、いかに命名されたか。
 この号の「トータル・スコープ」は特別版。「SF作家万国博を行く」と題して、星新一が70年大阪万博を見て回るのを、大伴昌司がレポートしている。随所で星新一独特のブラックジョークが冴え渡る。出色の万博レポート。
 山野浩一が「若い創造としての『ニューウェーブ』と『ニューポップス』」という評論を発表している。やたら「解放」「解放」と叫んでいるが、何から何を解放するのかよく判らん。

(2011.1)
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