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SFマガジン思い出帳 第47回

雫石 鉄也







1970年8月号 No.136

掲載作

中間宇宙 
団清二訳  アラン・E・ナース
若い種族 
小尾芙佐訳 アイザック・アシモフ
時のオデュセウス 
眉村卓
海魔 
関口幸男訳 A・E・ヴァン・ヴォクト
大いなる正午 
荒巻義雄
自由への道 
都築道夫
マリアナ 
斎藤伯好訳 フリッツ・ライバー
非常食料 
南山宏訳  シオドア・コグスウェル
オスカー 
大野二郎訳 クリーヴ・カートミル

 この号、表示の月号は8月号だが、読者の手元に届いたのは、1970年6月25日だ。1970年の日本万博はこの年の3月に開幕している。だから、万博開幕3ヵ月後のSFマガジンである。時期的に、もう少しで夏休みという時期だ。万博人気が絶頂に向かっている時である。
 この時期にどんぴしゃのタイミングの記事が掲載されている。「SFファンのための万国博ガイド」筆者は大伴昌司。
 SFファンには博覧会好きが多い。小生は、70年の日本万博は神戸から吹田まで日参した。だいたいのパビリオンは見た。このころは、小生はまだファンダムに首を突っ込んでおらず、1人で万博通いをしたが、81年の神戸のポートアイランド博、90年大阪鶴見の花博は、お仲間とつるんで見に行った。
 万博のガイドブックは山ほど出たが、そこはそれ、なんといってもSF専門誌であるからして、SFファンが興味を引きそうなポイントを要領よくまとめてある。小生も大いに参考にした。
 巻末特選ノベルシリーズと銘うって70年になって、海外の中篇を掲載してきた。この号で6作目となる。
 で、その6作目は、ナース「中間宇宙」どこやらの研究機関が物質移送機を作ってしまった。それが異次元の住人を刺激したらしい。サンフランシスコとボストンが消滅。世界の命運は、次元を行き来できる1人の天才少年の肩にかかっていた。 
「若い種族」子供たちが小さな宇宙人を捕まえた。スピルバーグの「ET」の先駆け。最後にどんでん返し。
「時のオデュセウス」未来人がギリシャ神話の英雄オデュセウスにちょっかいをかいた。タイムパトロールに逮捕される。余談だが、小生がチャチャヤングで拙作のショートショートを眉村さんに読んでもらった時に、頂いたサイン本は銀背の「時のオデュセウス」だ。
「海魔」サメの化身が人間に化けて襲ってきた。
「大いなる正午」荒巻義雄の小説デビュー作。難解である。
「自由への道」都築道夫のショートショート。死刑のアイデアネタ。
「マリアナ」ショートショート。ボタンを押すとモノが消える。世界が消える。
「非常食料」エビの缶詰を食う。
「オスカー」へんな生き物。
 万博期間中に開催された、国際SFシンポジウムの趣意書が掲載されていた。主催は日本SF作家クラブと日本SFファングループ連合会議。この2組織が共同でイベントを開催したのは、この国際SFシンポジウムだけである。
 ハヤカワSF文庫7月下旬発刊の広告。最初の刊行予定。ファーマー「緑の星のオデッセイ」ハミルトン「さすらいのスターウルフ」バロウズ「月の地底基地」ヴォクト「宇宙嵐のかなた」ハワード「征服王コナン」
 コラム「世界SF情報」で、ドイツの人気SF作家ということで、クラーク・ダールトンを紹介。ダールトン創案のドイツ製スペオペがあるとのこと。なんでも、ハミルトン、スミス、ヴォクト、ウィリアムスン、バロウズを足して5で割ったような連続冒険活劇。ペリー・ローダンのことである。あきずによく続いていることだ。

(2011.3)
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