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SFマガジン思い出帳 第50回

雫石 鉄也







1970年11月号 No.139

掲載作

脱走と追跡のサンバ(第2回)
筒井康隆
テレビ教育時代 
石原藤夫
親切 
浅倉久志訳 レスター・デル・リイ
種子よ 
荒巻義雄
似たもの同士 
団清二訳  アラン・E・ナース
二十年前、新宿で 
光瀬龍
ジョナサン・ホーグ氏の不愉快な職業(前篇) 
矢野徹訳 ロバート・A・ハインライン
時間線をのぼろう(第3回) 
伊藤典夫訳 ロバート・シルヴァーバーグ

 速報という形で、国際SFシンポジウムのレポートが掲載されている。レセプションから本大会、お別れパーティーまでの6日間の記録だ。参加した海外作家は以下の通りである。
 アーサー・C・クラーク(イギリス)
 ブライアン・W・オールディス(イギリス)
 フレデリック・ポール(アメリカ)
 ジュディス・メリル(カナダ)
 ワシリー・ザハルチェンコ(ソ連)
 エレメイ・パルノフ(ソ連)
 ワシリー・ベレジノイ(ソ連)
 ユーリー・カガリツキー(ソ連)
 イリーナ・コジェブニコワ(ソ連)
 参加5ヶ国の作家による共同宣言文が掲載されている。それによると、このようなSFシンポジウムが、各国まわりもちで、数年ごとに開催されることを、希望し、期待している。と、記されているが、残念ながら国際SFシンポジウムはこのとき1回だけだ。また、日本で国際的なSFイベントが開催されるのは2007年に横浜で開かれた第65回世界SF大会まで待たなければならなかった。37年もの年月が経った。
 さて、巻頭のコラム「サイエンス・ジャーナル」加藤喬の本号の記事は「空飛ぶ列車」リニアモーターカーのこと。そこにこのような記述が。「国鉄ではこの新しい〈超高速特急〉を1980年までに東京大阪間500キロの路線に配備しようと考えている」今は2011年である。30年も当初の考えより遅れている。考えていた国鉄も今はない。
 それでは掲載作に触れていこう。
「テレビ教育時代」石原先生の初級IT講座70年代版。
「親切」新人類が、旧人類の生き残りの一人に大変な親切をする。その親切とは楽園のような惑星を1個あげる、というもの。さてさて。
「種子よ」荒巻さんのデビュー2作目。さすが西洋絵画に詳しい荒巻さん。文字で読むボッシュの絵だ。
「似たもの同士」ある病院でインターンがいたずらで、新生児室の赤ちゃんをなにかと入れ替えた。それが学会に大騒ぎを巻き起こす。
「二十年前、新宿で」ショートショート。20世紀の新宿と古代中国がリンクしていた。       
「ジョナサン・ホーグ氏の不愉快な職業」夫婦で探偵事務所をやっているランダルに奇妙な依頼人が来る。「私が昼間なにをやっているのか調べて欲しい」探偵夫婦は依頼人ホーグを調べるが、ふに落ちないことばかり。
 この年のヒューゴー賞と星雲賞が報じられている。受賞作は次の通り。
ヒューゴー賞
長編 闇の左手 アーシュラ・K・ル・グイン
中篇 影の船  フリッツ・ライバー
短編 準宝石の螺旋として考えた時間 サミュエル・R・ディレーニイ
星雲賞
長編 霊長類南へ 筒井康隆
短編 フル・ネルソン 筒井康隆
海外長編 結晶世界 J・G・バラード
海外短編 リスの檻 トーマス・M・デッシュ   

(2011.6)
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