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SFマガジン思い出帳 第51回

雫石 鉄也







1970年11月臨時増刊号 No.140

掲載作

牙の時代 
小松左京
倭王の末裔 
豊田有恒
転生 
平井和正
多聞寺討伐 
光瀬龍
恐怖体験 
石森章太郎
キャプテン・パースト 
永井豪
ドジ田ドジ郎の幸運 
藤子不二雄
赤い霧のローレライ 
松本零士(原作レイ・ブラッドベリ)
英雄コナン★巨象の塔 
団清二訳 ロバート・E・ハワード
アンタレスの星のもとに 
関口幸男訳 エドモンド・ハミルトン
地底のとかげ人 
堤英治訳 アンドレ・ノートン
やさしい人柄 
星新一

 今号は秋恒例の臨時増刊号。秋の3大ジャンボ特集と称して、日本人作家、漫画、ヒロイックファンタジーの豪華3本立て。なかなか読み応えのある増刊号といってよい。
 まず、日本人作家特集。小松=破滅、豊田=歴史、平井=メタモルフォーゼ、光瀬=時間、と、4人の作家がそれぞれの得意ワザで競作している。
「牙の時代」渓流釣りに行った。でっかいヤマメが釣れた。そのヤマメが襲いかかってきた。最近、なぜかイライラする。私もふくめて全ての動物が攻撃的になってきた。何かがおかしい。
「倭王の末裔」豊田お得意の東アジア古代史。朝鮮半島の騎馬民族がいかなる経緯で日本列島にやって来たか。そしてその日本侵攻の指揮を取ったのは、頼りない王に代わって、妃だった。その妃は神功皇后と後世になって呼ばれる。
「転生」高校生3人がトラックの暴走事故に巻き込まれた。女子高生二人だけが生き残り、その場にいた者全員死亡。男子高校生一人行方不明。生存者のうち一人は後になって不可解な死をとげる。なぜ由紀ひとり生き残ったのか。行方不明の男の子はどこに、そしてこの男子は何者?平井らしい情念のSF。
「多聞寺討伐」山奥の荒れ寺多聞寺周辺になにやら異変が。近郷近在の衆に金を施しているらしい。代官所から討伐隊が派遣される。てだれの剣客4人をふくむ討伐隊が寺に入ると。時間犯罪者モノ。光瀬の時代劇は読まされる。
 漫画4本は、やっぱりこういう短編SF漫画は藤子がうまい。少し(S)不思議(F)な漫画。藤子SFだ。石森はホラーオムニバス。永井はキャプテン・フーチャーのパロディ。ブラッドベリと松本はミスマッチなのでは。
 さて、ヒロイック・ファンタジー特集のうち2本は同じような作品。異世界にまぎれこんだ青年が、敵方に捕らえられた姫を救い出してめでたしめでたし。
「地底のとかげ人」青年はパイロット。異世界の生物はとかげ人。異世界はどうやら地球の中らしい。
「アンタレスの星のもとに」青年は冒険好きな貧乏な若者。異世界の生物はクモ人間。異世界はアンタレス星系の惑星カルダー。職人ハミルトンらしい娯楽SF。追いすがる敵の戦闘機。逃げ切れるか。空中戦。敵の都市へ侵入して姫を助ける。悪の裏切り者との光線剣でのチャンバラ。なんのことはないスターウォーズである。
「英雄コナン★巨象の塔」この作品だけ異質。コナンシリーズだ。宝石が散りばめられた塔に侵入したコナンは巨象と対面する。もちろん、この巨象、ただの象ではない。
 後、星新一のショートショートとソ連のSF画家ソコロフの紹介。ところで、この号で深見弾が紹介したソコロフ、そのソコロフの画集を小生は70年の大阪万博のソ連館で買った。いまも手元にある。なつかしきかな、万博を想い出す。

(2011.7)
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