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SFマガジン思い出帳 第54回

雫石 鉄也







1971年2月号 No.143

掲載作

BS6005に何が起こったか
小松左京
餌鳥夜草子 
光瀬龍
小鬼 
星新一
脱走と追跡のサンバ(第5回)
筒井康隆 
かれらと私
眉村卓
悪戯 
平井和正
アラビアのロレンス再び 
豊田有恒
コンピュータ惑星 
石原藤夫
越すに越されぬ・・・
福島正実
東京未来計画 
野田昌宏
鳥はいまどこを飛ぶか 
山野浩一
自由の声 
石川喬司
白壁の文字は夕陽に映える 
荒巻義雄
およね平吉時穴道行 
半村良
特別読物 インサイド・SF・ワールド(上)
この愛すべきSF作家たち  
伊藤典夫
SFコミックスの世界
第2回 コナンが荒野をやってくる 
小野耕世
SFスキャナー
ヒーローたちに何が起こったか?
鏡明
特別掲載 ソ連の現代SFアート
НФイラストラーツィア
深見弾

 創刊11周年記念特大号ということで「これが日本のSFだ!」と銘うった特集。昔は、毎年2月号は創刊N周年なので、通常号より増ページしていた。特集企画のタイトルは、マジでそのとおりで、14人の日本のSF作家総出演である。第1世代はこれで全員といっていいだろう。この小説14編に漫画が2編。手塚治虫「熟れた星」水野良太郎「宇宙の英雄ワンタンメン」の2編だ。読みである号だった。
「BS6005に何が起こったか」小松左京としては珍しい観念的な小説。仏教的とも読める。
「餌鳥夜草子」光瀬お得意の時代ものSF。時間犯罪者は江戸で平和に暮らせるのか。
「小鬼」星ショートショートである。ババ抜きをやっている。小鬼がババか?
「かれらと私」地球軍団がオーバードライブでやってきた世界は異様だった。その異様な世界でいかにして地球人のプライドを保つか。
「悪戯」ぬるま湯不良学生たちの学校に新任教師がやってきた。元A級のスペースマンだった教師に悪戯をしかける。
「アラビアのロレンス再び」「プリンス・オブ・ウェールズ再び」に続く「国連開戦監視委員会」モノ。石油が出て金が有り余っているイスラム国がなぜ戦争をしたがる。
「コンピュータ惑星」おなじみヒノシオコンビの惑星もん。その土星そっくりの惑星は星系全体がコンピュータだった。
「越すに越されぬ・・・」彼女はマジでよりを戻したいのか、それとも別人か。福島正実はSFの鬼だが、彼自身はどうして本格SFを書かないのだろう。福島SFというと、ほとんどがブンガク的なのでは。
「東京未来計画」大昔から、時を経て生きている不思議な女の子。野田さんのSFとしては珍しく暗い。
「鳥はいまどこを飛ぶか」反体制運動の男が主人公。鳥が目の前を飛ぶ。異次元への通路が開かれる。
「自由の声」地球は宇宙人に支配されている。ラジオのDJの合間に抵抗を呼びかけるメッセージが。
「白壁の文字は夕陽に映える」その白痴の男の知能は低下する一方だった。その男が白壁に不思議な文字を書いた。知能がない、というより、知能を必要としない新人類か。
「およね平吉時穴道行」山東京伝の妹が昭和の時代へやって来てスターになった。主人公は半村さん自身か。半村さんは滝沢馬琴が嫌いらしい。
 伊藤典夫のエッセイ「この愛すべきSF作家たち」が面白い。にゅーうぇーぶ嫌いのJ・J・ピアースという人が、なんと度胸のあることに、ハーラン・エリスンにケンカをふっかけた。小生はエリスンは好きだが、NWは嫌い。どっちかというとピアースの肩を持つ。 

(2011.10)
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