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SFマガジン思い出帳 第55回

雫石 鉄也







1971年3月号 No.144

掲載作

アライドの白い柱
山田忠訳 アルカージイ&ボリス・ストルガツキー
『オー!』にご注意を
赤塚栄訳 ヴェラドレン・E・パルノフ
予言者 
池上弘訳 アナトーリイ・ドニエプロフ
生命の圧力 
町田実訳 ドミートリ・ビレンキン
酵素M 
深見弾訳 エレメイ・パルノフ&ミハイル・エムツェフ
命令 
船戸牧子訳 L・スプレイグ・ディ・キャンプ
珊瑚礁にて
関口幸男訳 アルジス・バドリス
脱走と追跡のサンバ(第6回)
筒井康隆
友よ、明日を・・・ 
横田順弥
美亜へ贈る真珠 
梶尾真治
大河漫画
鳥人大系 
手塚治虫
特別読物 インサイド・SF・ワールド(下)
この愛すべきSF作家たち  
伊藤典夫
SFコミックスの世界(第3回)
スーパーマンはなぜ結婚しないのか
小野耕世
SFロボット工学入門(第11章)
ロボットは進化する
石原藤夫
SFスキャナー
SF雑誌の動向
団精二
日本SF英雄群像(上)
第二次大戦前のヒーローたち
横田順弥

 巻頭特集=現代ソ連SF最新傑作選ということで、ソ連SFを5編紹介している。どうしても英米SFに偏りがちになる海外SFの紹介だが、昔はおりにふれてやっていた。SF専門誌を標榜する雑誌なのだから当然だ。海外SFは英米だけではない。確かに東欧圏のSFはなじみが少ないかもしれないが、英米SFに慣らされた目で見ると新鮮だ。
 この号はソ連SF5編に加えて、デ・キャンプとバドリスの短編、さらには二人の日本人新人作家のデビュー作2編。米ソ日となかなか国際的なラインナップとなった。
「アライドの白い柱」卵の機械、と、いうか機械の卵かもしれん。そいつは成長するのだ。
「『オー!』にご注意を」芸術作品の感動を数字で表す。飲むだけで感動が得られる薬が開発された。そして文明社会が崩壊した。
「予言者」磁気が人間に影響を与える。
「生命の圧力」火星に不時着。絶体絶命。生命の神秘が彼を救う。
「酵素M」発掘された古代の有機物。それが彼の体内に入った。それからの彼はついてない男。理不尽なことが次々に降りかかる。
 ここまでの5編が最新(1971年当時)のソ連SF。アメリカSFに比べて生真面目な感じがする。そのアメリカSF2編。
「命令」実験によって知性を持ったクマが、病気に侵されアホになった人類を救う。
「珊瑚礁にて」珊瑚礁の海でおかしげなモノを見つけた。おりからのハリケーンにめげず、警官の邪魔も退けてそれを見守った。するとそれは海の中から。
 次の2編が横田順弥と梶尾真治のデビューである。それまで二人ともファンダムでは名の知られた人たち。満を持してのデビューといっていいだろう。
「友よ、明日を・・・」一人の少年が蝶を追って国境を越えた。それが最終戦争の引鉄だった。あのハチャハチャのヨコジュンのデビュー作はシリアスな最終戦争破滅ものだった。
「美亜へ贈る真珠」航時機館へ毎日やってくる娘。目的は航時機の乗員らしい。娘は一粒の真珠を持っていた。娘の意思は彼に伝わるのか。「泣かせのカジシン」のデビュー作がこの作品とは大いに納得。
 手塚治虫の長編漫画「鳥人大系」の連載が始まった。
 伊藤典夫の「この愛すべきSF作家たち」国際SFシンポジウムで来日してナマで接した海外のSF作家。おもしろいのは、ブライアン・オールディスとジュディス・メリル。オールディスは問題の「リトルボーイ再び」を書いたおっさん。それが平気で日本に来て、愛想をふりまき、人当たりが良く、なおかつくわせもの。実におもしろいおっさん。メリル日本を離れたくないとだだをこねる。SF関係者と同じぐらい熱心にベ平連の人たちと会う。

(2011.11)
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