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SFマガジン思い出帳 第57回

雫石 鉄也







1971年6月号 No.147

掲載作

東キャナル文書
光瀬龍
精神接触
小尾芙佐訳 アイザック・アシモフ
王者の祈り
山本光伸訳 デーモン・ナイト
継承の日
浅倉久志訳 シオドア・L・トーマス
ミール城の魔法使い
佐藤正明訳 ジャック・ヴァンス
脱走と追跡のサンバ(第9回)
筒井康隆
まちがえられた後光
城戸尚子訳 ヘンリイ・カットナー
月のさやけき夜に
矢野徹訳 マンリイ・ウエルド・ウエルマン
ミスター・ジンクス
深町真理子訳 ロバート・アーサー
緑の太陽
荒巻義雄
大河漫画
鳥人大系(第4回) 
手塚治虫
SFコミックスの世界(第6回)
ノスタルジア  
小野耕世
SFスキャナー
若者たちはその日・・・ 
団精二
エンサイクロペディア・ファンタスティカ
宇宙製造者たち(1) 
伊藤典夫

 この号の柱は2本立て。日本人作家の100枚クラスの中篇が2本並ぶ。光瀬の「東キャナル文書」と荒巻「緑の太陽」だ。
両方とも読み応えのある本格SF。
「東キャナル文書」「星間文明史シリーズ」のうちの1篇。火星の砂漠に滅び去った東キャナル市。繁栄を極めた東キャナル市の秘密を記した文書「東キャナル文書」この文書に導かれ人々は旅立つ。
「緑の太陽」屍体芸術がある町ヒヤデス星団のウランバルバラン。100光年をひとっ飛びするカルナック航法で、この町にやってきた男は二重人格者だった。夢オチかと思わせておいて、最後にどんでん返しがある。この2編、ベテラン光瀬と新鋭(当時は)荒巻の競演ともいえる。
「精神接触」最後の時が近い、とある星の知的生命が接触を試みた相手とは。
「王者の祈り」私は地上の王になった。
「継承の日」ショートショート。UFOが4機も飛来した。対応にあたった将軍が攻撃命令を出した。将軍の判断は正しいか?
「ミール城の魔法使い」黄昏の地球。人間合成の研究に腐心する若者。ある晩、彼の夢枕に賢人が立った。賢人は万能の呪文の入手方法を教えるという。
「まちがえられた後光」「月のさやけき夜に」「ミスター・ジンクス」の3篇はなつかしのアンノウン特集。アンノウンは1939年ジョン・W・キャンベルが創刊した。いまなおアメリカの中年以上のファンにはなつかしい、と解説にはあるが、いまなおの、いまとは1971年のことだろう。小生が初めてこの号を読んだ時は、中年以上のアメリカのファンではないから、別になつかしくはなかった。このたび、この記事を書くために読み直したが、アメリカの短編らしい短編で、なつかしくはないが楽しめた。
「まちがえられた後光」そそっかしい天使に間違って後光をつけられてしまった男。そのままの状態でお得意の接待におもむく。
「月のさやけき夜に」文豪ポーが主人公。ポーが「早すぎた埋葬」の経験者にあう。
「ミスター・ジンクス」人の「運」を自由にできる男。こいつが本気を出したら世界を支配できるか?

(2012.1)
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