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SFマガジン思い出帳 第6回

雫石 鉄也







1967年10月臨時増刊号 No.100

 記念すべき100冊目のSFマガジンである。昔は秋に増刊号が出ていた。今は毎号特集を企画しているが、昔はテーマごとの特集は秋の増刊号でやっていた。この号は「SF入門」と題して日本人作家8人がそれぞれのテーマにそった作品を発表している。
 スペース・トラベル「神への長い道」 小松左京
 タイム・トラベル「レイ子、クレオパトラね」 光瀬龍
 エーリアン「バイナリー惑星」 石原藤夫
 パラレル・ワールド「近所迷惑」 筒井康隆
 アンドロイド「植民者」 豊田有恒
 ファンタジー「夢の国からきた男」 石川喬司
 ディメンション「虚空の男」 半村良
 セクソロジイ「解放の時代」星新一
 というラインナップ。確かにそれぞれのテーマにそった作品を取り揃えてあるが、それぞれの作品が「SF入門」としての機能を果たしているかといえば少々疑問。「入門」と銘打つからには、SFを読み始めた初心者がその作品を読んで該当のテーマのSFの面白さに目覚める出発点となるべき作品でなくてはならない。この8編はいずれも好短編だが「入門」として適当かどうかはいささか疑問。「SF入門」とするよりも「SF見本市」とした方が良かったのでは。
 巻頭のエッセイは「SF美女群像」野田宏一郎。いつもの通りのノダコウ節のエッセイ。このなかでアメリカ西海岸のBNFベティ・ジョー・トリンブルとかいうおばさんが描いたレンズマンのキンボール・キニスンの恋人クラリッサ・マクドゥーガルのイラストが掲載されていた。野田さんはこんなイラスト見なきゃ良かったといいつつも件のイラストを紹介していた。小生はレンズマンシリーズのファンで、小生もこんなイラスト見なきゃよかった。なんとも不細工なイケズなクラリッサ・マクドゥーガル。野田さん、被害を自分だけにとどめずSFマガジンの読者にまで広めてしまった。デジカメで撮ってここで紹介しようと思ったが、レンズマンファンに被害をこれ以上増やしたくないので止めた。興味のある人は古いSFマガジンを引っ張り出して見てください。だだし、いっておくが見ない方がいいですよ。
 他に小説はネビュラ賞候補3人集
 溺れた巨人 J・G・バラード
 立ち往生 ラリイ・ナイブン(ラリー・ニーブン?)
 コンピューターは語らない ゴードン・R・ディクスン
「日本人にとってはSFとは何か」と題する座談会が掲載されている。今では考えられないような大上段に構えたタイトルの座談会で司会が編集長の福島正実。出席者が佐野洋、生島治郎、眉村卓、石川喬司。
 この号のイラストは中島靖侃、金森達の二人が全部のイラストを描いている。このあたりのSFマガジンのイラストレーターでは大おなじみのお二人。
   

(2007.10)

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