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SFマガジン思い出帳 第60回

雫石 鉄也







1971年9月号 No.150

掲載作

時は準宝石の輪廻のように
小野耕世訳 サミュエル・R・ディレーニー
終末も遠くない
伊藤典夫訳 ラリイ・ニーヴン
われわれはみな裸で死ぬ
浅倉久志訳 ジェイムス・ブリッシュ
首狩り 
山野浩一
脱走と追跡のサンバ(第12回)
筒井康隆
戦国自衛隊(前篇)
半村良
大河漫画
鳥人大系 第4章 
手塚治虫
SFコミックスの世界(第9回)
レヴォルーション
KOSEI
SFスキャナー
裏切りのドグマ
団精二
エンサイクロペディア・ファンタスティカ
宇宙製造者たち(4)
伊藤典夫

 8月号に引き続き1970年のヒューゴー・ネビュラ賞特集の第2回目。
「時は準宝石の輪廻のように」ネビュラ賞中篇部門・ヒューゴー賞短編部門受賞。正直小生はよく判らなかった。かっこいいのだけは判った。この作品、2011年9月号で再び訳載されている。2011年は「時は準宝石の螺旋のように」というタイトルで伊藤典夫訳であった。小野訳の方がよりかっこ良く小生はこっちの方が好きだ。冒頭の部分を比べてみよう。

小野訳 SFマガジン1971年9月号22ページより引用

 一世紀を、たて軸と横軸で、四つの部分に分けてくれ。で、おれには、そのひと区切りを切ってくれ。第三象限がいいな。おれは五〇年の生まれだが、いまは、七十五年だ。(引用終わり)

伊藤訳 SFマガジン2011年9月号227ページより引用

 今世紀を縦と横の座標軸にとってもらおうか。そこから一つ象限を切とって。よろしければ第三象限を。おれは50年に生まれた。いまは75年だ。(引用終わり)

「終末も遠くない」ネビュラ賞短編部門第3席・ヒューゴー賞短編部門第3席。めずらしや、ハードSFのニーヴンのヒロイックファンタジー。
「われわれはみな裸で死ぬ」ヒューゴー賞ノヴェラ部門第3席。めずらしや。あのハードSFのブリッシュが描く環境SF。北極南極の氷が溶けて地球の回転軸がぶれる。月への脱出を試みる。
「首狩り」めずらしや。山野浩一作品としては小生が気に入った。人の首を、生かしたまま切り落として、持ち帰り、保管して、管理する。
「戦国自衛隊(前篇)」映画にもなった。原作は映画とは違うところもある。基本的な設定は同じ。完全武装の自衛隊が、装甲車、哨戒艇、ヘリコプターとともに戦国時代にタイムスリップ。彼らの前に現れたのは長尾景虎。この作品、いまでいう架空戦記のハシリではないか。

(2012.4)
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