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SFマガジン思い出帳 第62回

雫石 鉄也







1971年10月臨時増刊号 No.152

掲載作

毒蛇 
小松左京
宇宙飛行士たち
光瀬龍
炎と花びら
眉村卓
大いなる失墜
荒巻義雄
幻魔大戦・抄
石森章太郎 原作・平井和正
ひょんひょろ
藤子不二雄
夜が明けたら
山上たつひこ
海軍拳銃1851
松本零士
ツザン・トゥーンの鏡
岡田英明訳 ロバート・E・ハワード
ダゴンの末裔
団精二訳  ヘンリイ・カットナー
ウリオスの復讐
関口幸男訳 エドモンド・ハミルトン
タンディラの眼
船戸牧子訳 L・スプレイグ・ディ・キャンプ
マルグリスの死
大野二郎訳 クラーク・アシュトン・スミス
やつら 
星新一 

 毎秋吉例の臨時増刊号。「秋のSFグランド・フェア」と称して日本人作家5編、漫画4篇、海外作家5編。いつもの通りにぎやかな陣容である。
 本号の内容は、上記のように小説10編漫画4篇以外は、真鍋博のカラーイラストと、「特別読物世界怪奇譚」としてコラムが9編。これだけである。いつもながらいさぎよい編集だ。
 日本人作家の、小松、光瀬、眉村、荒巻はいずれも100枚を越える力作である。増刊号ならではのラインナップだ。
 海外作家陣の5編は、「アトランティス英雄幻想譚」として、アトランティス大陸に関わる作品を集めた。なぜこの時期にアトランティスなのかは判らないが、ともかくアトランティスなのだ。
「毒蛇」おれは「ある男」を追っている。その男を殺せば一人前の男になれるのだ。動物は高等になるほど「毒」を持たない。有毒の哺乳類と鳥類はいない。「有毒」の人間とはどういう人間だろう。 
「宇宙飛行士たち」スクラップにするため、地球へ回航中の中古宇宙船が遭難。ジャンク屋に頼まれて、その船を回収に行った宇宙飛行士が、船中で「そいつら」と出あった。
「炎と花びら」司政官シリーズ。惑星サルルニンで知性ある植物たちとの交渉に当たる司政官クロベ・PPK・タイジ。そのクロベが「自立体」と出会う。
「大いなる失墜」Kは元大統領の天才科学者に呼び出された。Kに与えられた使命。超天才たちのチームに加わって木星開発計画に参加せよ。計画を実行。単身木星の底に探査に行ったKは何を見た。
「幻魔大戦・抄」少年マガジンに連載され中断されていた作品の抄訳。このあとSFマガジンに連載され、また、平井単独でSFアドベンチャーに連載され、一大幻魔ムーブメントが沸き起こる。
「ひょんひょろ」いるはずのない巨大なウサギ。そんなヤツを無視したらとんでもないことに。
「夜が明けたら」あの世とこの世の境い目で船を待つ人たち。
「海軍拳銃1851」骨董趣味の教授に連れられて宇宙へ。その時手渡されたのは古代の雷管式拳銃。 
「ツザン・トゥーンの鏡」倦怠の極み。何事もやる気がない王様。魔道士の魔法の鏡に囚われそう。 
「ダゴンの末裔」ゲスティなる男に魔道士ゼント殺害を依頼された男。ところがゲスティの正体はとんでもだった。 
「ウリオスの復讐」アトランティスの「火山力の守護者」ウリオスの助手と妻が不義密通の上逐電。そのためアトランティスは沈没。ウリオスは召使一人を連れて二人を執念の追跡。
「タンディラの眼」魔術師が王に命令された。タンディラ女神像の眼にはめ込まれた宝石を盗み出せ。
「マルグリスの死」大魔術師が死んだらしい。本当か?真偽を確かめるため妖術師たちは「塔」に入る。
 どうも、アトランティスには王と魔術師しか居なかったみたい。
「やつら」国境線に不思議な集団が出現。やつらは敵か味方か。
 この号も満足満腹であった。ごっそうさん。

(2012.6)
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