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SFマガジン思い出帳 第63回

雫石 鉄也







1971年11月号 No.153

掲載作

わがふるさとは黄泉の国 
半村良
第四世代
鈴木嘉道訳 アイザック・アシモフ
憎まれしもの
島岡潤平訳 フレデリック・ポール
ジュークボックス
小森正昭訳 ヘンリイ・カットナー
聖者をたずねて
浅倉久志訳 アンソニイ・バウチャー
インディアンごっこ
関口幸男訳 キャサリン・マクリーン
無限への崩壊
荒巻義雄
大河漫画
鳥人大系 第4章 オーベロンと私(その4)
手塚治虫
劇画ノヴェル
新・幻魔大戦
平井和正 石森章太郎
SFコミックスの世界(第11回)
ブラックマーク
KOSEI
空想不死術入門
第7章 時間の旅にご注意を
渡辺晋
SFスキャナー
SFオン・ザ・ロック
岡田英明
エンサイクロペディア・ファンタスティカ
宇宙製造者たち(7)
伊藤典夫

 この号の柱は「わがふるさとは黄泉の国」と「無限への崩壊」の2本。両方とも100枚クラスの力作。作者の半村良と荒巻義雄は、このころ最もノッていた作家ではないか。二人とも「伝奇ロマン」という新しいジャンルを開拓する。
「わがふるさとは黄泉の国」木曽の山奥に自殺村がある。そこの住民はちょっとしたことで、すぐ自殺するという困った村。半村の伝奇小説は、現実の地図にスーとカミソリで切れ目を入れる。その切れ目を開いて、そこに架空の土地を創造するという手法。この作品は、その半村伝奇小説の典型。
「第四世代」その老人は人の名前のつづりが気になってしかたがない。ワシの息子たちかも知れない。  
「憎まれしもの」俺は宇宙飛行士。かっての同僚たちに、ある種の感情を持っている。もっと気楽に宇宙船に乗れないものか。 
「ジュークボックス」ジュークボックスがジェリー・フォスターに惚れた。ジェリーはジュークボックスの助けを借りて作詞家として成功する。ところが男に惚れるぐらいだから、このジュークボックス、感情がある。
「聖者をたずねて」教皇の命令で、伝説の聖者アクィンを探す旅に出たトマス。ロバ型ロボットのロバットで目的地に着くと、聖者は死んでいた。その聖者の正体は。
「インディアンごっこ」その科学者は囚われ、厳しい拷問にかけられていた。救いを求めテレパシーを送る。接触した相手はインディアンごっこに興じる子供だった。 
「無限への崩壊」ぼくはミュータンツハンター。ターゲットのミュータンツは情無用で殺す。それが例え想いをかけた女でもだ。こんなぼくの仕事は人類のために必要だ。
 巻頭の科学コラム「サイエンス・ジャーナル」で原子力発電について言及している。そこで原発には冷却水が絶対必要との記述。つまり、原子力発電所の原子炉の冷却水がなくなれば恐ろしいことになる。それが現実となった。2011年3月11日東京電力福島第一原子力発電所。津波で全電源流失。冷却水がまわらなくなった。福島の事故は40年前から判っていたことなのだ。SF関係者のいうことは聞いておくにかぎる。
 星群の会とも縁がある第10回日本SF大会DAICONUのレポートがこの号に掲載されている。星雲賞を受賞した筒井康隆と小松左京、それに手塚治虫の3氏の写真が。3氏ともお若い。ご存命は筒井さんだけになってしまった。
 SFでてくたあの海外セクションで、西ドイツ製スペースオペラ「大宇宙を継ぐ者」の紹介が。これがペリー・ローダン・シリーズの第1作。あれから延々といまだに続いている。根気のいいことですじゃ。
 チャチャヤング・ショートショートが紹介されている。
「願い事」 和田宜久
「砂漠」  S・A
「ひも」  岩崎均
  小生もこのチャチャヤングのショートショートコーナーの常連であった。この3氏のうち、和田氏、S・A氏とは今も交流が続いている。定期的にお酒を酌み交わして親睦を深めている。40年。長いつきあいですじゃ。 

(2012.7)
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