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SFマガジン思い出帳 第65回

雫石 鉄也







1972年1月号 No.155

掲載作

筑紫のヤマトタケル 
豊田有恒
コロナ
山田和子訳 サミュエル・R・ディレーニイ
共謀者たち
風見潤訳 ジェイムズ・ホワイト
太陽踊り
大和田始訳 ロバート・シルヴァーバーグ
特選ショート・ショート5
松谷健二訳 ヘルベルト・W・フランケ
ミュータント売ります
加藤正美訳 エリック・フランク・ラッセル
誕生―マリー・セレスト号への挑戦
半村良
大河漫画
鳥人大系 第6章 スポークスマン
 手塚治虫
劇画ノベル
新・幻魔大戦 第1章 エド1999年B
平井和正 石森章太郎
SFコミックスの世界(第13回)
ターザン新時代
KOSEI
空想不死術入門(第8章)
再生・蘇生・生気論
渡辺晋
SFスキャナー
1970年度ヒューゴー賞受賞作
浅倉久志

 この号の柱は、豊田、半村の日本人作家二人の110枚の中篇2本。まず、豊田の「筑紫のヤマトタケル」和製ヒロイックファンタジーの2作目。1971年7月号(第58回)に載った「ヤマトタケル誕生」の続編。熊襲の川上タケルを倒したヤマトタケル。大和へ帰ろうとしたが、水を司る東海竜王が立ふさがる。さらに女王ヒミコ率いる邪馬台国が、大和の勢力圏を侵し始める。
「誕生―マリー・セレスト号への挑戦」B・O・A・Cのボーイングジェット機BA911便が羽田に着陸した。ところがBA911便はもぬけの空。乗員乗客95人がこつ然と消えている。空を飛んでいる飛行機からどうして乗ってる人がいなくなるのか。謎を探る奇現象雑誌の編集者が、有名なマリー・セレスト号事件とBA911事件の共通点に気がつく。911という数字がなんだか因縁めく。
「コロナ」黒人少女リーはテレパス。テレパスというものはストレスがたまる。自殺したくなる。バディという少年と接触してなぐさめられる。
「共謀者たち」巨大宇宙船内。超能力者どもが陰謀をたくらむ。
「特選ショートショート5」そのへんのファンジンに載ってそうな凡作ショートショート。第63回1971年11月号掲載の「チャチャヤング・ショートショート」の方が上である。
「太陽踊り」「害獣」を駆除して絶滅させている主人公はネイティブ・アメリカンだ。
「ミュータント売ります」ミュータント屋でおかしげな液体を飲んだ。身体がおかしくなってきた。
 この号のSFスキャナーで1970年度のヒューゴー賞が紹介されている。長編部門はラリイ・ニーヴンの「リングワールド」ネビュラ賞長編部門も受賞。長編2冠である。

(2012.9)
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