創刊12周年記念特大号。日本人作家15編。漫画は読みきり3編。連載漫画2編。これだけの分量だとさすがに読みでがある。ちょっと厚い目のアンソロジーを読んだぐらいの満腹感がある。今からちょうど40年前のSFマガジンであるが、これで420円。お徳用だったのではないか。
「HAPPY BIRTHDAY TO・・・」何かが狂っている。私が狂っているのか、それとも世界が狂っているのか。
「註釈の多い年譜」蛹山幼一(1992〜2029)の一生。註釈つき。
「枯れた時間」目立たない大学の柔道部員。レギュラーの選手にはなれそうにないが、時々ものすごい技を出す。勉強も熱心。そいつがケガをした。そいつは何者?
「有袋惑星花決闘」相棒の臭素生物ゴンベととも訪れた惑星の住人は有袋類が進化したものだった。
「不定愁訴」ばくぜんとした不安がある。空にはハレー彗星が現れるし、俺は人殺しをするし、この不安感は何なんだ。
「紺屋町御用聞異聞」タイムパトロールもの。十手持ちがタイムパトロールマン。同業者の十手持ち、同心、与力。この中でタイムトラベラーはだれだ。
「常識」ひとりの青年。その青年のドッペルゲンガーが何人も出てくる。
「子供の情景 ―シューマンのピアノ小曲集、標題による13の幻想」13のショートショート。いずれのショートショートも子供がテーマ。
「アチラ」夢の古書店シリーズ。元ヌードダンサーの作家で谷さゆりが急死した。どっかで聞いた話だ。
「システム化惑星」ヒノシオコンビの惑星シリーズ。三葉虫型ロボットがムカデ型ロボットを造っている。ムカデ型ロボットがクモ型ロボットを造っている。だんだん進化して行く。その果ては?
「5号回線始末記」野田さんお得意のノンフィクション的フィクション。大きなホテルのCATVを構築する。双方向放送。謎の質問をしてくるヤツが。そいつは誰だ。
「散歩道の記憶」半村良の私的なエッセイ。
「スペース・オペラ」あの山野浩一がスペースオペラを書く。そんなに嫌なら書かなきゃいいんだ。
「柔らかい時計」火星の大富豪ダリは嗜食症。孫娘のヴィヴィは拒食症。火星を食う。
「宇宙の牢獄」小惑星に流刑になったレーシングドライバー。重力の小さな賞惑星上で時速300キロで走れば、衛星軌道に乗って脱出できる。可能か?
お徳用である。40年ぶりに読み直したが満腹した。ごちそうさん。ゲップ。
(2012.10)