この号のウリは1969年度ヒューゴー賞ノヴェラ部門受賞ネビュラ賞ノヴェラ部門2席の「影の船」だ。正直、難解な作品である。このたび読み直したが、やっぱりよく判らなかった。読了するのに難渋した。ぼんやりと判ったのだが、宇宙空間を航行する船の中の話らしい。船内のバーが舞台。どうもこの船、船内を「魔女」や「吸血鬼」が徘徊している。
なお、作者のフリッツ・ライバー。この時点(1972年)での、ヒューゴー、ネビュラ最多受賞者とのこと。
「ひき裂かれた街」東京が昔のベルリンのようにソ連とアメリカに分割統治されている。主人公は15歳のころソ連地区を抜け出しアメリカ地区を行った。そこに彼の家はあったのか。あるアメリカ兵が親切にしてくれる。少年の目で見た、資本主義東京はどうであったか。改変歴史もの和製SFだ。作者の藤本泉はこれがSFマガジン初登場。
「帰れニュー・オーリンズへ」大富豪が私財を投じて、小惑星を改造して、懐かしのニュー・オーリンズを再現する。そこではサッチモ=ルイ・アームストロングを始めとするジャズメンがデキシーランドジャズを生演奏している。
「魔女の標的」新任の担任はすごい美人だ。彼女が赴任してから、学園は不思議な事故が続発する。みんな彼女にたぶらかされている。おれだけが彼女に禍々しいモノを感じていた。平井の大人気シリーズ「狼男シリーズ」と世界観を同じくするバイオレンス学園もの。
「トータル・スコープ」で「時計じかけのオレンジ」が紹介されている。悪夢のような近未来社会の暴力を描いたSF映画であるが、近年の非行少年のホームレス狩りのニュースなどに接すると、この映画が現実になったと思う。
(2012.11)