ロバート・F・ヤング特集である。ヤングである。ベタな恋愛SFのヤングである。ヤングは甘っちょろくて好かんというムキもおられようが、小生は好きである。べたべたな甘味料でまぶしてあるが、中身はしっかりアイデアストーリイだ。それにヤングは短編SFの名手といっていいだろう。
さて、ヤング特集3本のうちで1番長い「いかなる海の洞に」好きでいっしょになった恋女房。その女房、成人しているのに背が伸びる。どんどん大きくなる。巨大な女房は、実は海の眷族だった。でかくなっても好き。
「時を止めた少女」ロジャーはアルタイルから来たというエイレンという少女と知り合った。彼女は時間を操る?
「ペネロピへの贈り物」ひとり暮らしの老女。孤独をいやすお相手は猫のペネロピだけ。ある寒い日、外にたたずむ少年を自宅に招きいれた。奇跡が起きた。
グレッグ・イーガンあたりをお好きなムキは、ヤングというと、ケッとバカにされるかも知れないが、もっと評価されてもいい作家だと思う。
「Q」円盤ネタの短編である。SFの鬼福島正実は、自分が書くSFは、どうして本格SFが無いのだろう。
「妖異関ヶ原」信長亡き後、ヒ一族が目をつけたのは徳川家康。家康に天下を取らせるべく、関ヶ原の合戦を仕組み、家康を勝たせるべく算段する。ヒ一族の頭目隋風が家康の知恵袋、怪僧南光坊天海となる。
「性炎樹の花咲く時」フリーセックスの都市エロータス。性炎樹が燃え上がる淫靡な夏、オムニガミイの祭の頃、人々はセックスに燃え狂う。その時期はどんな貞淑な貴婦人でも何人もの男を巡り歩く。幼なじみの少年と少女は流れ者の男と知り合い、エロータスを出て旅に出る。
コラム「世界みすてり・とぴっく」で、アメリカの予言者の1972年の予言というのを紹介していた。「中国の毛主席は自国民に殺される」「カストロはキューバの支配力を失う」などなど。予言というより、当時のアメリカの願望だろう。まったく、予言なんてもんは大笑いである。
(2013.2)