戻る

SFマガジン思い出帳 第71回

雫石 鉄也







1972年7月号 No.161

掲載作

神州畸人境 産霊山秘録第四話 
半村良
ラン・チチ・チチ・タン 
山田和子訳 フリッツ・ライバー
ステッキで殺した 
風見潤訳 ウイリアム・F・ノーラン
救出者 
風見潤訳 アーサー・ポージス
トロピカル 
荒巻義雄
妖精の棲む樹 
深町真理子訳 ロバート・F・ヤング
劇画ノベル
新・幻魔大戦 第2章 ミュータントお時6
平井和正 石森章太郎
大河漫画
鳥人大系 第9章 うずらが丘(その4)
手塚治虫
SFコミックスの世界(第19回)
フリーク・ショウ
KOSEI
空想不死術入門(第12章)
狭すぎる地球
渡辺晋
SFスキャナー
女に憑かれた道
団精二
SF論壇
サイエンス?フィクション? その意味を問う(上)
ジュディス・メリル
SFはポルノに乗るか
福島正実

 この号は特集はなし。半村の産霊山秘録、荒巻、ヤングの3本が柱。半村と荒巻は70年代初頭、新進の作家として、伸び盛りでいちばん活発に活動していた日本人作家だろう。先月号に続いてヤングの中篇が。先月号に掲載しきれなかったから、この号にまわしたか。
「神州畸人境」産霊山秘録は4回目。徳川が天下を取って江戸時代となった。ヒである佐助が、ヒである藤堂高虎の手の者に追われる。産霊山秘録はこれまで3回掲載されたけれど、女性のヒは一人も出てこなかった。今回初登場、女性のヒ。「オシラサマ」というのがそれ。徳川体制も固まってきた。ヒ一族も影響されるのか。
「ラン・チチ・チチ・タン」これ、世界を支配するリズム。上方落語の「軒づけ」の紅毛碧眼バージョン。「てんつてんてん・とてちんとてちん・ちりとてちんちりとてちん」
「ステッキで殺した」猫いじめ。昔、桂ざこば師匠が朝丸時代に「動物いじめ」というネタをやってはった。あれの鴻毛碧眼バージョン。なんやこの号は、えらい上方落語ネタが多いな。
「救出者」裁判である。博士は裁かれている。なんで裁かれているのか。カミもホトケもあるものか。
「トロピカル」ミス・トイは靴になっていた。熱帯市にやって来た男は時間旅行社だった。取引相手のK氏は「婚約者の館」へ案内してくれた。そこで逢ったのがミス・トイだ。男は蛇皮を仕入れにきたのだが、納品された商品は人皮だった。
「妖精の棲む樹」ストロングは樹木技術者。いろんな惑星でいろんな樹木を伐採してきた。今は鯨座オミクロン第18惑星の巨大な樹で仕事をしている。その樹には妖精が棲んでいた。異星で妖精と出会う。とってもヤングなお話。
 福島正実のエッセイ「SFはポルノに乗るか」今から見ると、別に目くじら立てるようなことではないと思うが。なにをそんなに力説しているのかよく判らん。それになんでこんなエッセイが掲載されたのか不思議。そんなに意味のあるととは思えぬ。前編集長の権限でもってゴリ押しでこんな原稿をのっけたか。

(2013.3)
inserted by FC2 system