この号は特集はなし。半村の産霊山秘録、荒巻、ヤングの3本が柱。半村と荒巻は70年代初頭、新進の作家として、伸び盛りでいちばん活発に活動していた日本人作家だろう。先月号に続いてヤングの中篇が。先月号に掲載しきれなかったから、この号にまわしたか。
「神州畸人境」産霊山秘録は4回目。徳川が天下を取って江戸時代となった。ヒである佐助が、ヒである藤堂高虎の手の者に追われる。産霊山秘録はこれまで3回掲載されたけれど、女性のヒは一人も出てこなかった。今回初登場、女性のヒ。「オシラサマ」というのがそれ。徳川体制も固まってきた。ヒ一族も影響されるのか。
「ラン・チチ・チチ・タン」これ、世界を支配するリズム。上方落語の「軒づけ」の紅毛碧眼バージョン。「てんつてんてん・とてちんとてちん・ちりとてちんちりとてちん」
「ステッキで殺した」猫いじめ。昔、桂ざこば師匠が朝丸時代に「動物いじめ」というネタをやってはった。あれの鴻毛碧眼バージョン。なんやこの号は、えらい上方落語ネタが多いな。
「救出者」裁判である。博士は裁かれている。なんで裁かれているのか。カミもホトケもあるものか。
「トロピカル」ミス・トイは靴になっていた。熱帯市にやって来た男は時間旅行社だった。取引相手のK氏は「婚約者の館」へ案内してくれた。そこで逢ったのがミス・トイだ。男は蛇皮を仕入れにきたのだが、納品された商品は人皮だった。
「妖精の棲む樹」ストロングは樹木技術者。いろんな惑星でいろんな樹木を伐採してきた。今は鯨座オミクロン第18惑星の巨大な樹で仕事をしている。その樹には妖精が棲んでいた。異星で妖精と出会う。とってもヤングなお話。
福島正実のエッセイ「SFはポルノに乗るか」今から見ると、別に目くじら立てるようなことではないと思うが。なにをそんなに力説しているのかよく判らん。それになんでこんなエッセイが掲載されたのか不思議。そんなに意味のあるととは思えぬ。前編集長の権限でもってゴリ押しでこんな原稿をのっけたか。
(2013.3)