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SFマガジン思い出帳 第73回

雫石 鉄也







1972年9月号 No.163

掲載作

江戸地底城 産霊山秘録第五話 
半村良
クレイターを越える旅 
大和田始訳 J・G・バラード
絶叫(スクリーム) 
山野浩一訳 ジャイルズ・ゴードン
猿とプルーとサール 
山田和子訳 キイス・ロバーツ
月面のキス 
山高昭訳  ハル・クレメント
馬を生け捕れ! 
伊藤典夫訳 ラリイ・ニーヴン
明日より永遠に(前篇) 
風見潤訳  キース・ローマー
現代宇宙詩シリーズ1
太陽系旅行
矢野徹訳  モーリス・カーペンター
劇画ノベル
新・幻魔大戦 第3章 超能力者の血2
平井和正 石森章太郎
大河漫画
鳥人大系 第10章 クロパティア・ピティアルム
手塚治虫
SFコミックスの世界(第21回)
バットマンと少年の夢
KOSEI
空想不死術入門 第14章 最終回
不死の幻理
渡辺晋
SFスキャナー
さようなら世界夫人よ
川又千秋

日本のSFと私
浅倉久志訳 ジュディス・メリル

 にゅーうぇーぶ特集である。山野浩一が「総括!新しい波!」と称して解説を書いているが、例によって独断的な評価によって「ヨイ作家」「ワルイ作家」に評価分けしている。アシモフなんか気の毒にオール×、バラードはもちろんオール◎。
 山野がいうようににゅーうぇーぶがSFに風穴を開け、SFが大きく変貌したかというと、あれから40年経った今から見ると、にゅーうぇーぶなんぞはSFをつまらなくしただけだった。あれはしょせん一時の気の迷いにすぎなかっったのだ。
「クレイターを越える旅」「絶叫(スクリーム)」「猿とプルーとサール」の3篇がにゅーうぇーぶ特集として掲載されている。このたび久しぶりに読んだが、あい変らずなんのことやらまったく判らん。SFどころか、小説にすらなっていない。SFは、まず小説であるべきと考える。
 さてさて読むのが苦痛なだけの、にゅーうぇーぶ特集の苦行はさっさと終えて次の作品に移ろう。
「江戸地底城」第五話ということで、時代は江戸期へと流れた。今回は鼠小僧ネタ。処刑された鼠小僧次郎吉はニセ者だった。ニセ者の処刑、それは幕府の権力につながる秘密にかかわることだった。本物は島送りにされていた。島抜けした本物の鼠小僧が幕府の秘密に迫る。
「月面のキス」困った。月面で、宇宙服の袖で前面のゴーグルを拭いたら曇ってしまった。よく見えない。さて、どうしたか。物理の試験に使えそう。
「馬を生け捕れ!」頭の後ろに光の輪をくっつけたタイムトラベラーが馬を捕まえにやってきた。そのころの馬は白馬で額に角をはやしていた。
「明日より永遠に」(前篇)ハードボイルドな筆致で書かれた近未来アクションSF。前篇だから設定だけで、具体的な情況はまだよく判らない。
 渡辺晋の「空想不死術入門」は今回で最終回。メリルのエッセイ「日本のSFと私」は翻訳者としての矜持を語っていた。
(2013.5)
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